オームの法則の計算問題
オームの法則に関する問題は、このような回路図を利用した形で出題されることになります。
Rの抵抗の両端に、Eの電圧を加えた時に、Iの電流が流れる、という構造ですね。
そして、この回路図の形式によって、大きく二つの分類をすることが可能となります。
直列回路と並列回路です。ここでは、慣れてもらうために抵抗が1つである場合について最初に検討しますが、これも直列回路の1形態であると理解していただいて差支えありません。
基本例題
この場合、オームの法則を利用することによって、簡単に求めることができますね。
V=IRなので、
V=5(A)×10(Ω)
V=50
答えは50Vということになります。
電流の単位
この問題では、いきなりオームの法則に代入することはできません。つまり、電流がAという単位ではなく㎃という単位によって与えられていることに気付かなければならないのです。
このように問題でAで与えられない場合には、単位を換算する必要があります。
1A=1000㎃であるから、300㎃=0.3Aとなりますね。
したがって、これでようやくオームの法則に代入することができます。つまり、
V=IRなので、
V=0.3(A)×15(Ω)
V=4.5V
答えは4.5Vということになります。まずは、この基本的な回路図の場合に、何を求められても答えることができるように練習を重ねましょう。
抵抗が2つの直列回路の計算問題
さて、ここからが電気に関する問題における中心的な範囲となります。
残念ながら、先に述べたようなシンプルな問題は、公式をしっかりと代入することができれば誰にでも容易に解答できることから、差をつけることが目的である入試問題で出題されることはあまりありません。
入試等では、以下に述べるような複雑な回路図が出題されることになりますので、それぞれの回路図における電流等の性質を合わせて整理しながら、理解を深めて下さい。
まずは、この図のような直列回路についての性質を説明します。図のように、二つ(以上)の抵抗が繋がれている回路のことを直列回路と言います。この回路においては、以下のような性質が成り立つことになります。
直列回路の性質
- 電流は、どの場所も同じ
- 電圧は、それぞれの箇所を足したものが全体の電圧となる
- 抵抗は、それぞれの箇所を足したものが全体の抵抗となる
数式に表すと以下のようになります。
- I=I₁=I₂
- V=V₁+V₂
- R=R₁+R₂
直列回路から導かれる性質を利用して問題を解く必要があります。これらの性質を利用した上で出題されることから、上の図においては様々な内容が問われることになります。
直列回路の抵抗の計算
全体の抵抗が問われた場合には、直列回路における抵抗の性質(R=R₁+R₂)を利用することによって、5Ω+3Ω=8Ω、と求めることになります。
直列回路の電流の計算
抵抗Aにおける電流の大きさが問われた場合には、直列回路における電流の性質(I=I₁=I₂)であることを利用して、2Aと解答しなければなりません。
直列回路の電圧の計算
全体の電圧が問われた場合について考えてみましょう。直列回路の電圧の性質は、V=V₁+V₂であることを確認しましょう。とすると、抵抗A、抵抗Bにおけるそれぞれの電圧を算出して、これを合算する必要がありますね。
それぞれの電圧を求めるには、各部位における電流の大きさを知る必要がありますし(これは②において、全ての箇所が2Aであると、直列回路の性質から導かれました。)、これによって、それぞれの部位においてオームの法則を利用する必要があります。つまり、
抵抗Aにおける電圧V₁=2(A)×5(Ω)=10(V)
抵抗Bにおける電圧V₂=2(A)×3(Ω)=6(V)
したがって、求めるべき全体の電圧は、
10(V)+6(V)=16(V)
ということになるでしょう。
オームの法則を利用した電圧の求め方
この問題は別の角度によって解答することもできます。
つまり、それぞれの箇所における抵抗の値が分かっていることから、全体の抵抗の値が8Ωであることがわかります(直列回路における抵抗の性質を利用します)。とすると、全体の電圧を求めるに際して、これをオームの法則に代入すると、
全体の電圧=2(A)×8(Ω)=16(V)
という形で求めることもできるのです。
勉強のポイント
大切なことは、回路をしっかりと観察することによって、わからない場所の値をどんどん出していく根気があるのか、ということです。
電圧の問題を考えてみてわかっていただけたと思いますが、方法によっては結果的に回り道のこともありますし、思いつけばすぐに答えを求めることもできたりします。
しかし、どのような方法によってでも、性質をしっかりと理解しておけば、回り道であったとしても確実に解答に至ることができる、ということを分かっていてください。
あとは、ひたむきに一つずつ計算を重ねることによって答えを導くことができるのです。
抵抗が2つの並列回路の計算問題
直列回路とは異なり、今回は図のような並列回路についての性質を説明します。
直列回路の場合の性質よりも少し複雑に感じるかもしれませんが、しっかりと暗記すれば問題ありません。
並列回路の性質
- 電流:I=I₁+I₂
- 電圧:E=E₁=E₂
- 抵抗:R=E/I(オームの法則)
並列回路の抵抗の求め方
例えば全体の抵抗を求めるように指示されたらどう解いたらよいでしょうか?
まずは電流を求める
本問では、各部における電流の大きさが分かっていることから、
I=5(A)+3(A)=8(A)
ということがわかります。
次にオームの法則を利用して抵抗を求める
全体の電圧である30Vとあわせてオームの法則を利用すると、
10(V)=8(A)×全体の抵抗
よって、全体の抵抗=1.25(Ω)
ということを求めることができます。
場合によっては、各部における抵抗の大きさを求めることが指示されることもありますが、これは各部においてオームの法則を代入することによって求めることができます。
受験などで出題される応用問題
直列、並列の回路における基本的な性質を説明し、また、それによって出題されるであろう問題について、解説を加えました。
この基本さえしっかりとわかっていれば、回路におけるどの箇所の値を要求されたとしても解答を導くことができます。ここまでの理解があれば、中堅程度の難易度の問題であれば処理することができます。
さいごに、難関校を受験する予定の生徒には、例えば直列回路と並列回路が複合的に連結されているような回路も出題される可能性がある、ということだけを指摘しておきます。
もちろん、上で述べた性質を組み合わせるだけで解答に至ることはできるのですが、その使い方をしっかりと学習しておく必要があるでしょう。
さいごに
例えば、回路図によって電流等の値が指定されるのではなく、グラフを読み取るという形で出題されることもありますし、電熱線から発生する熱量の問題と組み合わせる形で出題されることもあるなど、電気の範囲は、かなりの多様性が見受けられる範囲となっています。
そのような応用問題を処理するには、上でのべたような基本的な公式を処理する能力、各回路の性質をすばやく処理する能力が当然に前提とされています。
そこで、電気の分野に限った話ではありませんが、ここでは特に、基本問題を確実に定着させることが要請されます。
難しい範囲かもしれませんが、しっかりと学習を積みましょう。