扇形の面積等を処理する問題を苦手とする生徒は多いように思われます。理由は二点考えられます。
一つは、扇形の面積を求める公式が複雑に見えること、もう一つが、そもそも前提となる円についての理解が定着していないことが挙げられるでしょう。
そして、2番目の円について理解が定着していないことを原因とする場合が多いのではないでしょうか。扇形は円の一部でしかない、ということさえしっかり分かっていれば、この範囲でひっかかることは考えられません。
まずは円の公式についての理解を確実なものにすることからはじめましょう。
円の面積、円周を求める公式
円の面積を求める公式
円の面積=半径×半径×3.14
円の面積=πr²(半径=r、円周率=π)
どちらで覚えても問題ありませんが、中学生であれば、後者の公式を暗記してしまう方むしろ簡単なのではないでしょうか。定着にあたっては、練習を重ねるより他ありません。
円周を求める公式
- 円の周囲の長さ=直径×3.14
- 円の周囲の長さ=2πr
先程と同様、後者の公式を覚えることをおすすめします。また、中学生の場合であれば、直径と理解するのではなく、半径×2という理解を前提にした方が、文字が増えなくて良いと思われます。
扇型の面積を求める方法
ここで扇形についての公式を覚える際に、いきなりその公式の暗記に進むべきではありません。つまり、扇形はあくまで円の一部でしかないということを意識した上で、円についての公式に、一部の修正を加えることからはじめるのです。
円の面積公式の修正
円の面積についての公式は上に述べた通りですが、扇形の面積を考えるにあたって、これに修正を加えてみましょう。
- 円の面積=半径×半径×3.14×(360°/360°)
- 円の面積=πr²×(360°/360°)
このように、円の面積について、中心角を考慮に入れた公式と捉えなおすのです。つまり、円は、一見中心角というものが存在しないように思えますが、実はそれは隠れているだけであって、360°の中心角があると表現することができます。
扇型の面積を求める公式
円の中心角というものを考慮に入れた場合には、扇形の面積は非常に容易に理解することができます。つまり、扇形の中心角x°を、円の中心角の360°に代入してやれば良いわけです。
- 扇形の面積=半径×半径×3.14×(x°/360°)
- 扇形の面積=πr²×(x°/360°)
扇型の面積を求める問題
例えば、半径が2、中心角120°の扇形の面積が問われた際には、上の公式に問題を当てはめてみましょう。
=2×2×3.14×(120/360)
=2×2×3.14×(1/3)
=4.18
によって求めることができます。
ここに、中心角120°の扇形というのは、同じ半径の円の三分の一に位置することがイメージしやすくなるかと思います。実際に円を描いてみて確かめてみると良いでしょう。
扇型の弧の長さの求め方
円の公式の修正
扇形の弧の長さを求めるに際しても、円の公式を修正することから始めます。扇形の弧の長さというものは、円の外周の一部であることを認識するためです。
- 円の周囲の長さ=直径×3.14×(360°/360°)
- 円の周囲の長さ=2πr×(360°/360°)
先程と同じように、円にも中心角があって、それが360°であるという認識を加えた上での修正を行います。そして、これを前提に、扇形の弧の長さの公式を捉えます。
扇型の弧の長さの求め方
- 扇形の弧の長さ=直径×3.14×(x°/360°)
- 扇形の弧の長さ=2πr×(x°/360°)
扇形の弧というものは、円の一部であることを認識すれば、仮に扇形独自の公式を忘れたとしても、円の理解からこれを自ら導くこともできます。
扇型の中心角の求め方
いままでご紹介した扇形の公式を前提にして、問題において面積や弧の長さが与えられることによって、中心角を導くことを要求される問題があります。
例えば、半径2の扇形の面積が3.14である時に、中心角を求めよ、という具合です。
このような場合であったとしても、先の扇形の公式に代入することによって、簡単に解答を導くことができます。つまり、
3.14=2×2×3.14×(x/360)
1=4×(x/360)
x=90°
ということになります。応用問題に感じるかもしれませんが、利用する公式は同じです。そして、この公式を利用するにあたっては、円からの基本的な理解があれば、特に壁を感じることもないでしょう。
扇型の面積と中心角の求め方のまとめ
何度も繰り返しになりますが、扇形というものを、「円の一部である」と理解し、また、円の公式を、中心角を考慮にいれたものに修正することによって、扇形と円をリンクさせることがポイントです。
この作業によって、高度な図形問題が、基本的な問題にすりかわることになります。図形問題は視覚的なイメージを、いかに脳内に作り出せるかが非常に重要です。したがって、仮に扇形だけが問題で問われることがあったとしても、見えない円が存在するのだと考えれば、たやすく答えを導くことができるでしょう。