算数、数学と言っても、たいていの分野は公式を暗記することによってある程度を習得することができます。
「公式を暗記すること」と、「公式を問題に当てはめること」が比較的直結する分野が多く、このようなものについては、いわゆる数学的な思考力というものを要求していません。
しかし、順列、組み合わせの問題は非常に多岐にわたるので、完全にパターン化し、単純暗記による習得をするには不向きの分野です。
また、問題に具体性があるからこそ、公式を選択する際に「自分の頭の中で問題を抽象化する」作業も必要とされます。この分野を苦手とする生徒が多いのは、このような理由によるところが大きいです。
だからこそ、順列と組み合わせの基本的な意味を理解し、どんな複雑な問題であったとしても、常にその基本に立ち戻ることから筋道を捉える練習を重ねることによってある程度の定着は可能です。
言い換えると、この分野の習得をきっかけとして、数学的な思考力というものを培うことができ、結果として、算数、数学全体の学力向上を目的とすることが可能なのです。
時間はかかるかもしれませんが、「常に基本解法にさかのぼることによって複雑な問題を処理する」という姿勢の定着を目的としつつ、学習をすすめると良いでしょう。
順列と組み合わせの違い
「ABC三人の中から二人を選んで並べること」と、「ABC三人の中から二人を選ぶこと」には違いがあります。前者が順列で、後者が組み合わせです。そして、この違いを常に頭に入れることがとにかく重要です。
順列の場合には、三人から二人を選ぶ作業と、選んだ二人を更に順番に並べる作業、の二つの段階が含まれています。組み合わせで要求される作業は、順列で要求される作業の一段階目に位置するわけです。
つまり、順列の方が大変な作業で、組み合わせよりも数が大きくなる、というイメージをもっておくと良いでしょう。
組み合わせの解き方(慣れるまでの解法)
組み合わせの問題
まず、「ABC三人の中から二人を選ぶこと」場合、何通りあるかを考えてみましょう。これは、4で述べる順列の一段階目にあたる部分になります(ここでは便宜上ABCという名称で処理しますが、実際の指導にあたる場合には、具体的に、友人やご家族の名前を提示すると効果的でしょう。具体性があればイメージがしやすいです)。
組み合わせの考え方
この問題の場合、人数が少ないので、一つずつ数えあげることが可能です。微妙な判断を要するのですが、生徒の定着次第では、ある程度の手間が発生する場合でも、とにかく数え上げることに慣れるためにも、このように一つずつ具体的な人名をあげていきながら、全通りをカウントすることも定着のための第一歩です。「AB」「AC」「BC」の三通りであることが用意に導かれます。
順列の解き方(慣れるまでの解法)
順列の問題
では次に、「ABCの三人の中から二人を選んで並べる」場合、何通りあるかを考えてみましょう。
順列の考え方
まず、二人を選ぶことだけを考えましょう。ABCの三人のうちから二人を選ぶと、「AB」「AC」「BC」の三パターンがあります。3で述べた通りです。
そして、これをそれぞれ、順番に並べるのです。「AB」の二人を選んだ場合、その二人の並び方を考えると、「AB」と「BA」の二通りが考えられます。
「AC」「BC」の二人を選んだ場合も、それぞれ「AC」「CA」と「BC」「CB」の二通りずつがカウントされます。
したがって、「ABCの三人の中から二人を選んで並べる」場合には、その並び方は6通りある、ということになります。
具体的な計算方法
この問題を計算式で解答した場合、「3×2=6」という計算式が提示されることになります。この意味を上述の思考方法に当てはめて理解してみて下さい。
3(二人の選び方の数)×2(選んだ二人のそれぞれの並び方)=6
ということになります。
組み合わせ、順列の定着が進んだ場合
慣れるまでの考え方が必要な理由
順列、組み合わせの解き方に関して、34で述べた方法によって、イメージを掴ませることがとにかく重要です。
全体をもれなくカウントするという作業は、生徒の成長過程的な要素としても重要なもので、つまり、大人からすれば簡単なことのように思いますが、それは我々が人生経験を積んでいるからこそ可能となっているだけで(日常生活でこういったことを考えることは本当に多いですよね。)、生徒(お子さん)がこれを習得しにくいのは、経験の不足という点に起因する部分が大きいのです。
まずは、何度も、三人の場合、四人の場合と、比較的数が少ない段階から順を追いましょう。
順列(定着が進んだ場合)
次に、数学的な思考を加えた解法に進みましょう。
先の順列の例での「3×2=6」に別の意味を加えます。つまり、三人の中から二人を選んでそれを並べる、のではなく、「三人の中から一番目にくる人を数え、次に、二番目にくる人を選ぶ」という理解に進めるのです。
本問の場合、一番目にくるのはABCの三通りがあります。そして、それぞれの場合、二番目にくるのは二通りですね。つまり、例えば、Aを一番目に選んだ時は、二番目にくるのはBかCの二通りです。
そして、一番目にはABCの三人がありえます。したがって、3×2=6という式によって解放が導かれる、という思考回路です。
組み合わせ(定着が進んだ場合)
そして、この順列における理解を前提に、組み合わせの場合には、「数えすぎている」ということを理解させてください。234で述べた通り、順列は組み合わせよりも多く数えなければならず、それは順番をつけてしまっている点です。
つまり、組み合わせのみを考える場合には、順列によって得られた結果から、順番部分のプロセスを消去する必要があるのです。
これを本問についてみると、ABCから二人を選んで並べてしまっていますが、二人を並べる必要はない、つまり、一番と二番という作業付けをしてはいけないのです。つまり、
3×2=6
で得られた結果を、一番と二番という意味が不要で、つまり、2で割る必要があるのです。したがって、
3×2÷2=3
という計算式によって答えが得られます。
最後に
以上のように、順列・組み合わせをとくにあたっては、数式の意味内容をしっかりと理解させる必要があります。この作業を疎かにしては、複雑な問題の糸口は一切つかめなくなってしまいます。
まずは最少人数の場合についての理解をしっかりと深めることによって、次の段階に進むのが、実は一番の近道なのです。