電気分解の仕組みと電気分解による様々な物質の化学反応式

化学の分野において幾種類かの化学変化を学習します。その代表例とも言うことができるのが「分解」です。

分解とは、1種類の物質が2種類以上の物質に分かれる化学変化のことを言いました。

中高で学習する化学変化のカテゴリーの数自体はそう多くはありません。

そのため大切なことは、それぞれの化学変化の中で具体例として挙げられる、実際の化学変化、化学反応式を確実に押さえてしまうことです。

抽象論の理解だけでは定着が難しいのが化学範囲です。実験の様子などにも配慮しながら、学習を進めていきましょう。

電気分解とは

今回ピックアップするのは「電気分解」です。

さきほど述べたように、化学変化の中の一つの種類として「分解」を挙げることができました。

ただ、一言で「分解」と言ってしまったとき、「1種類の物質が2種類以上の物質に分かれる」という結果にしか注目していません。

このような分解の中で、「どのような方法によって分解をするのか」という点に注目すると、更にいくつかの分類をすることができます。

今回焦点をあてる「電気分解」とは、まさにこの観点を取り入れたものです。

分解のうち電流を流すことによって物質を分解するもの、のことを言います。

電気分解の学習ポイント

電気分解の範囲を学習する際に押さえなければならないポイントを先にご説明しておきます。

  • 分解した発生した気体の体積比
  • 分解した気体が陽極と陰極のどちらに発生するのか

この2点を意識しておきましょう。

電気分解で用いる実験装置

電気分解について学習するとき、以下のような器具を利用することが一般的です。


(画像:Wikipediaより)

H字管電気分解装置と言います。

中に、電気分解をしたい液体を入れ、電流を流します。

すると、陽極・陰極に、それぞれ一定比率で(基本的には)気体が発生することになります。この様子を観察するための装置ですので、しっかりと押さえておきましょう。

以下では具体的な化学反応を取り上げていきますが、その際には、常にこの二ポイントを意識しながら学習を進めることです。

そして、その判断をするためには、化学反応式をしっかりと書けなくてはなりません。詳細な化学反応式の書き方については以下のリンクをご参考下さい。

参考リンク:化学反応式の基礎知識と8つの重要な化学反応式の作り方

水を水素と酸素に電気分解する

まずは、水を水素と酸素に電気分解をする化学反応について検討してみましょう。

水→水素+酸素
2H₂O→2H₂+O₂

このように化学反応式を書くことはできますか?これが書けることが、電気分解についての理解の入り口になります。

水を電気分解する上でのポイント

一点、水を水素と酸素に電気分解する様子を観察する実験で注意して頂きたいポイントがあります。

それは、利用する液体は、純粋な水ではなく、水酸化ナトリウムと溶かした水が利用されることが多い、という点です。

理屈の上では水を利用するだけで電気分解を観察することは可能なのですが、水酸化ナトリウム水溶液を利用すれば、より電気分解を観測しやすくなる、という理由があります。

水酸化ナトリウムを混ぜる理由

なぜ水酸化ナトリウムを混ぜると電気分解が観測しやすくなるかと言うと、水酸化ナトリウム水溶液が電解質であるということに起因します。

中学生の段階では、「電気を通しやすくなるから」という理由だけを押さえておけば充分です。この答えだけを聞こうとする問題もよく出題されるので、確実に押さえておきましょう。

水を電気分解する化学反応式

さて、本題に戻りましょう。水を電気分解すると、酸素と水素に分解することができますね。

水→水素+酸素
2H₂O→2H₂+O₂

電気分解により発生する気体の体積比

まず、発生する気体の体積比について考えてみましょう。

この化学反応式を注目すると、発生する気体の比を読み取ることができますね。つまり、H₂の係数が2で、O₂の係数が1です。

したがって、発生する気体の比は、水素:酸素=2:1ということになります。

どちらの極に気体が発生するのか?

次に、どちらの極にそれぞれの気体が発生するのか、という点考えてみます。

中学生の段階では、おおよその知識だけで結構です。

それぞれの原子の構造について考えたとき、実は、原子とは「1つの原子核+いくつかの電子」という構造で出来上がっているのです。

そして、電気を通したときに、電子が取れたり加わったりします。すると、原子全体が+か-に偏ることになります。原子の種類によって、+になるのか、-になるのかは決まっています。

「電気分解されると、それぞれの原子・分子が、+か-の性質を備えるようになる、そして、どちらになるかは原子・分子の種類によって決まっている」

という結論だけを覚えておきましょう。

これを今回の場合について考えてみましょう。水素H₂は、電気が流されることによって+の性質を持ちます。そして、酸素O₂は、電気が流されることによって-の性質を持ちます。

そして、「+の性質を持つものは陰極(-)に引き寄せられる」という大前提の性質によって、+である水素H₂は陰極側で発生します。

そして、逆に、「-の性質を持つものは陽極(+)に引き寄せられる」という性質によって、-である酸素O₂は陽極側で発生します。

水を電気分解した結果

  1. 陰極に水素が、陽極に酸素が発生する。
  2. 発生量比は、水素:酸素=2:1、となる。

という二つの結論を導くことができます。

原理まで考えると少し助長になってしまいますが、各ポイントでの結論をしっかりと押さえておけば、決して複雑なものではありません。

塩化水素を水素と塩素に電気分解する

次に教科書等で取り上げられる例として、塩化水素の電気分解についてご説明します。押さえるべきポイントは先程のべたように、発生する気体量と、どちらの極に発生するのか、という点です。

塩化水素の化学反応式式

塩化水素を水素と塩素に電気分解した際の化学反応式は以下になります。

塩化水素→水素+塩素
2HCl→H₂+Cl₂

気体の発生比について

まずは、気体の発生量について考えてみましょう。

この化学反応式を書くことができれば簡単に判断することができるでしょう。H₂の係数が1、Cl₂の係数が1です。したがって、発生する気体比は、水素:塩素=1:1、ということが導かれます。

どちらの極に気体は発生するのか?

そして、次はどちらの極に発生するのか、という点です。

先程説明したように、水素H₂は+の性質を獲得します。

そして、受験戦略的なポイントをご紹介すると、電気分解として出題される問題では、「一方の物質が+であれば、もう一方は-となる」という暗黙の了解があります。

とすると、水素H₂が+の性質を獲得するものであることを知っていれば、塩素Cl₂は-の性質を得る、という結論を導くことができるでしょう(ここに関する原理は、高校生1年生の化学範囲での学習範囲です。興味があればぜひ勉強してみましょう!)

さて、+の性質を獲得した水素H₂は陰極側に引きつけられることになります。そして、-の性質を獲得したCl₂は陽極側に引きつけられることになります。

塩化水素を電気分解した結果

塩化水素を水素と塩素に電気分解した結果

  1. 陰極に水素が、陽極に塩素が発生する。
  2. 発生量比は、水素:塩素=1:1、となる。

という二つの結論を導くことができます。

塩化銅を塩素と銅に電気分解する

中学生で学習する電気分解の中で、ほんの少し変わったものをご紹介しておきましょう。それが塩化銅の電気分解です。

塩化銅の化学反応式

まずは化学反応式から書いてみましょう。

塩化銅→塩素+銅
CuCl₂→Cl₂+Cu

勘が良ければすぐにわかるかと思いますが、上の二つの例と大きく違う点がありますね。

塩化銅の電気分解は気体が1種類しか発生しない

それは、気体が1種類しか発生しない、という点です。つまり、銅は気体として生じることはありませんので、どちらのかの極において、気体が発生せずに個体がこびり付くことになります。

さて、塩素Cl₂がマイナスの性質を獲得することは先程学習した通りです。とすると、この塩素は陽極側に発生することになります。

これに対して、金属である銅は、+の性質を獲得します。とすると、+の性質である銅は、陰極側に引きつけられますので、陰極において、個体として生じることになります。

以上より、陽極では気体である塩素が発生し、陰極では個体である銅が発生する、という、上の二つとは少し異なる様子を観察することができます。

まとめ

中学生の理解の範囲では、「イオン」についての説明をすることができませんので、どうしても結論ありきの説明になってしまいがちです。

しかし、単純に結論だけを示してしまっても、頭に残りにくくなってしまうのもまた事実です。そこで、中学生なりに敷衍(ふえん)した一応の説明をしなければなりません。

また、上では三つの電気分解の流れについてだけご説明しましたが、派生した問題の可能性についても、常に意識をする必要があると思われます。

例えば、水を電気分解する例について言えば、「線香の火を近づけた時に激しく燃え上がる極はどちらか?」というような形で、気体の性質にフォーカスする形での派生問題もありうるものです。

化学は非常に横断的ですので、常に全体での位置付けを意識することが、上達のためのポイントでしょう。

 

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