英語は得意ですか?英語は好きですか?
おそらく、英語の点数が伸びない人の中にも、実は「英語は好きだ」という方が多いと思います。せっかく好きであるのならば、点数も直結して欲しいと思うのは当たり前でしょう。
今回は、点数に直結するためのアドバイスを、長文読解、長文問題に関連してご提案します。
長文問題についての勘違い
英語の試験問題を分類すると、簡単に以下のように区別することができるでしょう。
- 単語の知識を問う問題
- 文法力を問う問題
- 読解が必要な問題
という具合です。
さて、それぞれの出題形式について指摘したいことはあるのですが、こと長文問題に関しては、非常に大きな勘違いがされている傾向にあります。
それは、「長文問題=長文読解」ということです。これは間違っています。
「長文問題=長文読解」ではない理由
特に私立大学の入試問題に顕著な例ですが、前半で文法問題などの細かい問題が出題され、後半の大問で長文が掲載される、というのが入試問題の一般的なひな形でしょう。
そして、この前後半の比較のせいで、「後半の長文問題は労力がかかる、長文問題は難しい」という思いこみがされがちです。
ただ、長文問題だからと言って、全ての設問が「長文の内容に踏み込んだ出題」というわけではありません。
長文という出題形式を使いながらも、実は単純に単語の意味を問うものであったり、文中の一文についての並び替え問題であったり、内容の読解をする必要なく解答することが極めて多い、ということを忘れないようにしてください。
「長文問題」の中には「長文読解」とは関係ないものが多い
中高生にとって、長文読解の敷居が高いのはわかります。
ただ、長文読解の問題の中にも、読解とは関係ないものが多くあり、それを確実に解答することで得点源とすることができるということを分かっているだけで、それを意識できていない人と大きく差を付けることができます。
英語はもちろん、入試全般に言えることですが、満点をとる必要などありません。
7割程度の正解率で充分に合格水準に達することができるのです。そのために、少し狡猾かもしれませんが、強かに出題に向き合うべきでしょう。
長文読解で意識すべきポイント
とはいっても、例えばセンター試験の後半の問題でもそうですが、しっかりと内容に踏み込んだ出題がされることも当然にあります。
そして、これらの長文読解を無視できない、という状況が生まれることも承知です。
そこで、長文読解に関して、いくつかコツ、というより意識すべきポイントについてご説明します。
接続詞を理解する
接続詞・接続句は非常に重要なポイントになります。
長文であるという性質上、どうしても文章と文章、段落と段落の関係を考える必要があります。とすると、それらを「繋ぐ」役割をする言葉に注目することで、文章と文章の関係を知ることができるからです。
becauseという接続詞の場合
例えば、【A because B】 という形でAとBの文章が繋がれているとき、Bの文章の読解をすることができなかったとしても、「何か理由が挙げられていて、Aという結論が導かれているのだな」という具合に、抽象化して理解することができます。
さらに、Aの文章を読解することができなかったとしても、Bという文章さえ読解することができれば、「Bが理由なのだから、もしかするとAの内容は〇〇かもしれないな」という形で想像することができてしまいます。
接続詞から文の意味を推測できる
「接続詞が大切です」と語られるのは、「接続詞を利用して、文章の意味を想像する足掛かりにしやすいです」ということが言われているのです。
理由・結果・同列・反対・比較など、それぞれの論理関係を導く接続詞をいくつ挙げることができますか?一例を挙げれば、
- 理由 → because
- 結果 → so
- 同列 → and
- 反対 → however,but
- 比較 → or
となりますね。これに注目するだけで、長文読解をいくらかやりやすくすることができるでしょう。
指示語について
これもよく言われることですね。英語の長文読解をするためには、指示語を無視することはできません。
受験生にとってツライのが、例えばitとあるときに、それが指示語として使われているのか、あるいは形式主語・形式目的語などの文法事項の一環として使われているのかよくわからない所為で手間がかかってしまう、ということでしょう。
残念ながら、これを手っ取り早く解決することはできません。
文法事項についての勉強は「大学受験」にとっては必須の作業です。
いわゆるパラグラフリーディングについて
今では予備校だけでなく、学校の授業でも教えられることが多いのが「パラグラフリーディング」でしょう。
語り手によって微妙にニュアンスが異なるのですが、段落ごとに意味を把握していけば、文章全体の大意を掴むことができる、段落ごとの関係を捉える、そして、それぞれの段落において、一番はじめの文章を特に重視すべきである、という類のものです。
日本語と比較した意味での「英語」という観点で、英語の文章の作り方にはこの特徴が見出されるから、という理由で提唱されるものではあるのですが、注意していただきたいことがあります。
それは、パラグラフリーディングが流行り過ぎていて、入試問題では少し対策がされはじめている、ということです。
パラグラフリーディングは論理的な文章が前提
対策のされ方にはいくつかあるのですが、例えばエッセイや小説問題が出題されたとき、パラグラフリーディングはあまり有効な手段ではありません。
パラグラフリーディングが成立するためには、「文章全体が論理的な文章である」という土壌がなければなりません。
論理的に、一般人が想像しやすい構成をとっているはずだ、という共通認識があるからこそ、段落ごとに意味を捉えることで端的に全体像を捉えることができる、というものです。
つまり、安易に、「段落ごと」という意識をもってしまうことは危険である、ということです。
また、文章全体で完結していない形で出題されることも増えてきました。ある論文の途中部分だけを引用して出題された場合、推察という過程は極めて危険です。
何事でも大切なことですが、一つの方法論に完全に依存してしまうのは危険である、ということです。段落に意識を持ち過ぎるべきではありません。
私が常に長文読解で意識していたこと
ここまではいわゆる一般論。ここからは、私が常に長文読解で意識していたことをご紹介いたします。
まずは、とにかく文章を読みながら印を付ける、チェックをしまくる、というものです。
長文に印象を付ける
入試問題で出題された長文問題一つに対して、どれだけ多く時間をかけることができたとしても、30分が上限ではないでしょうか。
センター試験であれば一つの長文に15分ぐらいが目安とされています。
「初めて出会った文章を、どれだけ自分に対して印象付けることができるか」が鍵となります。
どこに書いてあったっけ?とならないために
ご経験があるかと思いますが、一通り文章を読んだあとに、「あれ?どこに書いてあったっけ?」という状況に追い込まれたことはありませんか?
これは非常に勿体ない。
一回目、文章を読むときに、できるだけ自分に印象付ける作業を平行して行います。どのような方法でもいいのですが、例えば私がしていたのは、
- 順接、追加、結論系のポジティブ系の接続詞や表現には大きく「〇」
- 逆接系のネガティブ系の表現には大きく「△」
- 言い換えをしているときには、わかりやすく「=」
- 人物名などの固有名詞が出てきたときには頭文字を表記(Johnであれば「J」というように)
など、色んな目印を付けていました。
印象付の作業をしたほうがいい理由
実際にご覧いただけないのが残念なのですが、例えば文章中にalthoughが出てきたときには、この上に重なる形で大きく△を表記しています。
この作業をすることで、文章全体に目を通し終わった時点では、書き込みだらけになってしまっていました。
「あんまり書き込みが多いようだと、逆にわかりにくくなるのでは?」と思われるかもしれませんが、所詮見開き一頁から二頁程度の長さです。
しかも、十分程度の間に付けられた印です。これが全く分からなくなってしまうほど、皆さんの記憶力は弱くはありません。
それよりも、何も印をつけないまま、「何も手を動かさないまま」、文章全体を何となくさらってしまって問題に挑むことのほうがよほど危険ではないでしょうか。
長文問題の解き方
長文問題の解き方は
- はじめに文章を全部読んでしまう派
- 設問にあらかじめ目を通した上で、文章を全部読んでしまう派
- 文章を読みながら、設問も同時に読み進めていく派
の三つに分類されるでしょう。
私は、問題によって①と②を使い分けていました。③はしたことがありません。③を除外することには、明確な理由があります。
文章を読みながら、設問も同時に読み進めるべきでない理由
至って簡単なことですが、この解き方は、それぞれの問題を解く際に、文章全体を把握できていないという怖さがあります。
「英語は段落ごとに言いたいことが決まっているから」などの理由から、この解法でも問題ないと考える人も一応はいます。
ただ、この解き方をしている人で、英語の成績がかなり良い、というパターンの生徒に出会ったことがありません。
これについては、さらに踏み込むと、二つの理由を出すことができます。
長文問題では推測の材料が多く必要
一つが、まず、私もそうでしたが、学生の方が入試問題をとく上で、長文問題の文章をもれなく全て理解できている、ということは基本的にありえません。どこかしら読解しにくい部分があり、それを他の部分から推測するという作業が必要となるはずです。そうであるならば、推測するための材料はできるだけ多くなければならない、という判断をするのがむしろ普通でしょう。
読むか、解くかどちらかに集中すべき
二つ目が、読むか解くか、どちらかに集中して下さい、ということです。平行して作業してしまうと、どうしても何度もページをめくらなければなりません。
その度、文章を見失ってしまったり、集中が切れうる状況が発生します。どちらか一つに固めてしまった方が、圧倒的に効率が高いでしょう。
文章を先に読むか、設問に先に目を通すかの使い分けについて
「文章を先に読む」と「設問を先に読む」の使い分けをどうしていたか、ということについてですが、センター試験では、最後の長文問題は文章を先に、それ以外の長文では設問に先に目を通していました。
文章を先に読む場合
設問を意識せずにゆっくりと文章の内容を理解したいときに、この方法を使うのです。非効率的に思われるかもしれませんが、純粋に英語の文章を楽しむことができて、読みおわったときに、案外満足感を得られます。
そして、不思議と、国語の読解問題を解く感覚で、解答することができます。
入試本番にこれを試すのは危険ですので、一度、家で練習がてらやってみて下さい。「試験とは関係のないような気持ちで文章を読んでみる」ということから得られる感覚は、おそらく無駄にはならないはずです。
設問に先に目を通す場合
これに対して、私立大学の入試問題、センター試験の最後の長文以外では、絶対に設問の意図を知ってから文章全体を把握するようにしていました。
時間的な制約があるために、どうしてもゆっくり長文を噛みしめることができないときには、読解の際に、ある程度のウエイトをつけなければならないでしょう。
とすると、設問に関係なさそうなところは、厳密な読解を省略する必要があります。
長文の読解について
おそらく一番議論がわかれるところと思われるのですが、
- 一文一文の読解をしっかりするのか(つまり、SVなどの事項を完璧に把握するのか)
- 一文ごとに厳密な作業をそこまでしないのか
という点は、受験生にとっては悩ましいところでしょう。
理想は一文一文の読解
正直なことを言うと、理想は前者です。全ての文章についての分析をしっかりした上で、文章全体を把握した方が良いのは当たり前です。
なぜなら、文章から出題されるのですから、文章さえしっかりと全て読み解けば、解答できるのは当たり前なのです。
ただ、時間の余裕がない、これが現実です。
ここで大きく二つの方向に分かれます。
一つが、文章を分析することはやめたくないから、分析の速度をできるだけ早くしたい、というタイプ。もう一つが、文章を分析する作業を諦めて大意を掴んでいくというタイプ、つまり、後者でしょう。
分析の速度アップを目指す方は、頑張って知識をつけましょう。ただ、これが大抵の問題でできるようになったときに、受験の英語に関して怖いものはなくなります。
結果的に、英語の力がかなりついている、という段階に至ります。
長文全体の大意を掴む方法
文章を分析する作業をせずに大意を掴んでいくを目指す方は、大意を掴むための工夫をできるだけしていくことです。そのために、パラグラフリーディング、接続詞に注目するなどというポイントが挙げられているのです。
また、これを行う方は、国語力・論理力を高めることもおすすめです。
例えば、地球温暖化に関するテーマで論説文が出題されたとしましょう。
とすると、地球温暖化について世間で言われていることについて、文章を読むまでもなく、いくつかの事項を頭に浮かべるのです。
CO₂の排出量の議論なのか、新しいエネルギーの話なのか、発電所の話なのか、また、CO₂についてピックアップする文章であっても、CO₂が主な原因であるというタイプの問題であるのか、逆に他にも要因があるというテイストの問題であるのか。
このようないわゆる「一般論」というものについての引き出しを、普段から増やしておくことがポイントです。
最近では、「テーマごと」の単語帳などの出版数も増えてきました。
このようなもので、どのようなテーマがあるのか、ということを知っておくのです。さらに言えば、英語を離れて普段から新聞・ニュースなどで見識を深めるのも重要です。
新聞、というのはもしかすると古いかもしれませんね。今ではネットニュースが簡単に閲覧できますから、一般常識に属するような類の議論については、ある程度の見識があると、英語の長文読解には役立つと思われます。
英語の長文読解について
何も満点を目指す必要はありません。ただ、ある程度の点数を確実にとるための姿勢で勉強していると、何故か不思議と満点に近付くのが長文読解の不思議なところです。
崩れるときにはほとんど点数がとれない長文読解ですが、とれるときにはほとんど満点に近付くことができるのもまた長文読解。
どうせなら、後者を目指してみましょう。
最後にもう一つだけ。
自宅で勉強しているときに長文問題に触れるのであれば、絶対に復習の段階ででも良いので、全ての文章を解析するようにしましょう。
英語を学習するうえで、無駄なものはありません。できるだけたくさん英語の文章に触れる機会をもつことが大切です。
しかも、問題形式で触れた文章ですから、きっとあなたにとってそれなりの記憶を残してくれる貴重な存在です。
ですので、自習の際には、長文を全てじっくりと味わうという過程を経るようにしましょう。一つの長文を全て読みきることができた、という経験もまた、無駄になるものではありません。