ここでは正負の数に計算方法についてご紹介します。単純に計算能力だけの育成を目指すならば、むしろ機械的な作業の反復だけでも十分対応できるでしょう。
ただし、それでは数学学習を進める上で、どこかの段階で必ず頭打ちになってしまいます。計算式についてシンプルな仕組みの説明だけをしていますが、その意味を考えるプロセスをこそが数学の力を伸ばすカギです
正負の数の足し算と引き算
正負の数の足し算・引き算を学習する前に、以下の作業の反復によって式変形をすることを学習させましょう。
符号変換のルール
- +(+2)⇒+2
- +(-2)⇒-2
- -(+2)⇒-2
- -(-2)⇒+2
結局、正負の数の足し算・引き算計算問題では、()を外す作業の正確性が問われるに過ぎません。
全ての足し算・引き算の問題では、上の4パターンの外し方ができるかどうかにかかっているわけです。これに意味を与えてやりつつ練習を繰り返してやれば必ず定着するでしょう。
- 「+」と「+」のときは「+」
- 「+」と「-」のときは「-」
- 「-」と「+」のときは「-」
- 「-」と「-」のときは「+」
これが定着した上で、実際の計算問題に触れることにします。
計算問題
- +2+(+2)=+2+2=+4
- +2+(-2)=+2-2=0
- +2-(+2)=+2-2=0
- +2-(-2)=+2+2=+4
ということになります。表記方法の問題として、「+4」という答えについて、本来であれば「+」記号を省略して「4」と表記するということを定着させるのは負の数についての計算が定着してからでよいでしょう。
まずはできるだけ「正負」の記号に触れさせることを主眼に置くべきです。
正負の数の掛け算・割り算
掛け算・割り算については、計算式に触れつつ法則性を定着させる方法でよいでしょう。
ただし、その前提として、割り算というものが、必ず掛け算として表記できること、が定着している必要があります。この点についてはしっかりと復習・定着を行ってください。
掛け算、割り算の符号変換のルール
- (+2)×(+2)=(+4)
- (+2)×(-2)=(-4)
- (-2)×(+2)=(-4)
- (-2)×(-2)=(+4)
ここまでご説明したことと矛盾していると思われるかもしれませんが、掛け算・割り算に関して、足し算・引き算ひいては正負の意味について行ったような「式の読解」による説明をすることは困難です。
「-の数字を掛ける」ということの意味を理解できるのは大学数学に入ってから学習することです。残念ですが、掛け算・割り算に関しては、いわゆる公文的な学習によるしかありません。
- +と+を掛けると「+」
- +と-を掛けると「-」
- -と-を掛けると「+」
また、掛け算・割り算の場合には、そこに含まれている「-」の数が奇数であれば「-」、偶数であれば「+」という法則でも良いかもしれません。三つ以上の計算になった時に、このような説明に変更することで対応できるでしょう。
まとめの問題
お気づきかと思いますが、算数で習った計算法則は確実に中学に入るまでにおさらいをしておかなければなりません。どれだけ正負の意味を理解したとしても、計算の順番などを理解していなければ意味がなくなってしまうからです。また、一つずつ丁寧に計算を進めるという慎重な態度の定着も必要でしょう。
この問題は小学生のうちの学習の大切さを思い知る良い機会だと思われます。
2×(-2)÷(-4)-{-2+(-2)×2}
=(+2)×(-2)÷(-4)-{(-2)+(-2)×(+2)}
=(+2)×(-2)×(-)-{(-2)+(-2)×(+2)}
=(+1)-(-2-4)
=(+1)-(-6)
=1+6
=7
この問題には、今回学習したことを全て盛り込んであります。一つずつ読み進めながら、理解の深度を試してみて下さい。
正負の数について
その内容が平易である故に、逆に教え辛さを覚える範囲が正負の範囲であると思われます。ここで躓かせないかどうかが今後の数学の成績の今後を左右することになるので責任は重大となります。
そして、今後のことを思うのであれば、上で述べてきたように、「数式を読解する」という癖付けを行うことを心掛けるとよいでしょう。
私の経験則でしか語れないのですが、今まで指導してきた生徒のうち、数学の成績が良好な生徒はみな「数式の意味を考える癖」がしっかりとついていました。また、数式を日常生活に結び付けることができる能力を備えていました。
大学時代の学友についても同じことが言えます。皆、「意味を考える」ことに対して、その作業をどのような場面においても当たり前のように行っていました。
したがって、正負の数を学習する際、そこで触れる計算問題が簡単であるからと言って、説明を省略したり、あるいは、機械的な作業のみに落とし込めることは生徒の未来の幅を狭めることに他なりません。
普段から数字に触れることができるように工夫をすることが大切でしょう。
一つ例を挙げるなら、例えばテレビを観ているときに天気予報で前日との比較気温が必ず出ます。あれを利用して、昨日の気温を聞いてみるのも良いのではないでしょうか。意味付けの作業を行う場面はたくさんあると思います。こちらのアイディア次第でしょう。
さいごに
正負の学習を通して、そもそも数学の学習においてはどのような視点が必要なのか、ということをしっかりと生徒に分かってもらうことが何より大切です。
ただ計算ができるようになることを目的とするのではなく、しっかりと時間をかけて、数式を読解するという癖をつけてやりましょう。