当然ですが、因数分解が求められる式は二次式に限定されるわけではありません。
三次式が問われることも充分にあり得ます。
ここでは三次式の因数分解についてご説明します。
三次式の因数分解の問題と解法
以下の式を因数分解しなさいx³-x²-4x+4
練習を重ねて、着眼点を養うしかありません。まずは解答を示します。
x³-x²-4x+4
=x²(x-1)-4(x-1)
=(x-1)(x²-4)
=(x-1)(x-2)(x+2)
結果論的なことになってしまいますが、二段目において、二か所の共通因数について整理したことで道が開けたことを実感してもらえるでしょうか?
2段目の因数分解が解法のポイント!
x³-x²についてみたときに、x²が共通していることから、これについてくくりました。そして、-4x+4について、4(あるいは-4)が共通していることから、これについてくくりました。
すると、二段目のように、それぞれの箇所で(x-1)というものを導くことができたのです。
=x²(x-1)-4(x-1)
二段目から三段目について、何が行われているかしっかりと理解しましょう。コツは(x-1)を1つの文字であると考えるのです。例えばx-1=Aとすると、二段目の式は
x²A-4A
と変形することができますね。これならば、Aでくくる、ということがイメージしやすいかと思います。その作業によって、三段目の数式が得られるのです。
ここで注意しなければならないのが、三段目の数式において、積の形になっているから因数分解が完了していると判断してはいけない、ということです。
(x²-4)をさらに因数分解する
この式を分析した時に、後ろのx²-4はまだ因数分解できることに気付かなければいけません!
この問題ではいくつもの作業を複合的に行う必要がありました。三次式である、という点で難しく感じたかもしれませんが、難易度としては極めて平均的なものです。
公式の暗記、着眼点について、何度も理解を重ねることによって、記憶を上塗りして定着を目指しましょう。
三次式の因数分解の頻出公式
三次式の頻出公式についても検討しておきましょう。
x³+y³=(x+y)(x²-xy+y²)
x³-y³=(x-y)(x²+xy+y²)
因数分解の応用問題では、時に三次式が当たり前のように出題されます。
そのような際、上でも出てきたようなテクニカルな着眼点をもって処理するパターンの問題と、公式を一発で当てはめるようなパターンの問題に分類することができます。
公式を利用する問題について、もし公式をしらなければ絶望的です(もちろん不可能ではありませんが)。知っておいて損はないでしょう。
三次式公式を利用した因数分解の解き方
例えば
x³-1
という問題があった時に
=x³-1³
と理解して、
=(x-1)(x²+x+1)
と因数分解できるかどうか?です。このような場合、もし公式を知らなければどのように解けばよいでしょうか。
公式を知らないの三次式の因数分解の解き方
それは、x³-1=0という三次式を念頭において、これの解を考えるのです。
ありがたいことに、この三次式の解(の一つ)が1であることはすぐにわかるでしょう。ということは、この三次式は(x-1)を因数に持つ、ということができるわけです。つまり、
x³-1
=(x-1)(x²+ax+b)
という表記方法が可能であることを意味します。そして、これを展開すると、
=x³+ax²+bx-x²-ax-b
=x³+(a-1)x²+(b-a)x-b
となります。これと最初のx³-1が等しいことから、それぞれの項を見比べます。すると
a-1=0
b-a=0
b=1
となります。つまり、a=1、b=1であることがわかります。これを代入すると、
x³-1
=(x-1)(x²+x+1)
と導くことができます。
いかがでしょうか。公式を暗記しておいた方が得だと思われます。もっとも、この公式を利用しない解法についても、しっかりと理解はできるようにしてください。引き出しを増やすためです。
2つ以上の文字を含む因数分解
最後に三次式ではありませんが、2つ以上の文字を含む式の因数分解について説明します。
応用問題のパターンを考え出すと無限にあるので終わりがないのですが、結局は上の問題と同じく、色々な観点から式を分析できるか、また、様々なアプローチを試みることができるかどうか、ということが問われています。
【問題】以下の式を因数分解しなさい。
x²-y²+2y-1 |
安心して頂きたいのですが、この問題を見た瞬間に、解答までの道筋が完璧に見える生徒は極めて少数でしょう。試行錯誤しながら、解答に至る練習をすることで、勘を養うのです。
まずは解答例を示しましょう。
x²-y²+2y-1
=x²-(y²-2y+1)
=x²-(y-1)²
={x+(y-1)}{x-(y-1)}
=(x+y-1)(x-y+1)
解説に入る前に、よくやってしまう間違いについてご紹介します。
勉強が進んでくると、どうしてもこの問題のx²-y²の部分に公式を利用したくなってしまうのです。その感性は正しいものです。
ただし、今回の問題ではそれを利用してはいけません。この箇所で公式を使ってしまうと、それ以外の2y-1と複合することができなくなってしまうからです。
さて、本問についてですが、やはり、三段目から四段目に至ることができるか、という点が最大のポイントでしょう。
もちろん一段目から二段目で行っているように、文字の種類ごとに整理するという作業も大切なことなのですが、気付けるかどうか、という点にかかっていますので、着眼点を養いましょうとしか言いようがありません。
それよりも三段目から四段目の式変形を確実に行うことができるか、という方が非常に重要です。ここでは因数分解公式が利用されているのですが、理解できますでしょうか。わかりにくい場合には、(y-1)をAと置いてみるとわかり易くなるかもしれません。
x²-A²
という式であれば、公式に代入しやすくなるのではないでしょうか。これに気付くことができれば、あとは符号の処理等、基礎的な計算事項に注意すれば解答に至ることができるでしょう。
さいごに
残念なことに、因数分解の問題を類型化しきることは困難です。また、「絶対に解ける方法」というものを提示することもできません。
ここでは、いくつかの公式をしっかり武器として使えるか、そして、様々な着眼点をもって数式を整理することができるか、ということが問われています。何度も試しては失敗する、という反復作業をどれだけ繰り返したかによって、自分の中の引き出しの数も変わってきます。
不思議と、何度も回数を重ねるにつれて、おおよその問題の方向性は見えてくるのです。例えば学校の先生に質問したとき、先生は簡単にいくつかの解答プロセスを提案するでしょう。
そして、たいていはそのプロセスのうちの一つは正解であるはずです。先生ができる理由は、ひとえに「経験を積んだ量が多いから」です。決して頭が良いから、という理由ではありません。
努力と結果がまさに比例する分野です。頑張って練習を重ねて下さい。
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