今回は「雲のでき方」についてご説明します。試験で問われる際には、これらの知識を単発的に問うものと、飽和水蒸気量の問題に関連して派生的に問うものの二種類が考えられます。
飽和水蒸気量についての理解も含めつつ、ご確認下さい。
空気中に水滴が発生する理由
雲のでき方について考える前に、どうしても看過できないポイントがあります。それは、露点・飽和水蒸気量について理解をしているか、という点です。
雲の正体は、水の粒・氷の粒が大気中にかたまって浮かんでいる状態のことです。
とすると、まずは「なぜ大気中に水の粒・氷の粒が発生しているのか」という点を理解することからはじめなければなりません。
露天・飽和水蒸気量とは
簡単に復習すると、ある気温において、空気中に含むことができる最大の水蒸気量は決まっていました(これを最大飽和水蒸気量と言いますね)。
そして、最大飽和水蒸気量を含んだ空気の気温を下げると、空気中にいることができなくなった水蒸気が凝結し、水滴という形で漏れ出します(漏れ出す時点の気温のことを「露点」と言いますね)。
気温が下がると最大飽和水蒸気量も下がるという関係にありました。
したがって、湿度が0でない限り、気温を下げ続けると、いずれは水滴が漏れ出でる現象が発生するのです。
気温が下がる理由
「気温が下がると水蒸気が漏れ出す」という前提を理解できたのであれば、「そもそもなぜ気温が下がるのか」という点についての考察に進んでみましょう。
ずばり、その答えは、「気圧が低くなるから」です。
上空ほど気圧が低い
雲は空高くに浮かんでいます。上空では、私たちがたっている地上よりも気圧がだいぶ低くなります。
「気圧が低いと空気が膨張して気温が下がる」という現象が起こります。
上空に行けば行くほど、気圧はどんどん低くなります。つまり、上空に行くほど、気温がどんどん低くなるのです。そして、この現象によって気温が下がり続けると、ある地点において露点を下回るでしょう。
この結果、空気中に水・氷の粒が発生するのです。
気圧が低いと気温が下がる理由
さて、雲ができるための気温の低下理由として、「気圧の低下」という現象が出てきました。では、どうして気圧が低下すると、気温も低下するのでしょうか。
気圧の低下で用いられる実験
これについては、フラスコ内の空気を注射器で引き抜くという実験が引用されて、その結果だけが記されることが多いでしょう。ここではもう少しだけ掘り下げた説明を加えておきます。
密閉したフラスコと注射器を接続します。そして、この状態で注射器を引くと、フラスコの内部に水滴が発生することを観察することができます。
ここから、気圧の低下→気温の低下、という現象が証明される、という記述が一般的です。
しかし、これでは少し不親切でしょうから、付言します。
フラスコの中の空気の変化
注射器をひくと、空気の体積はどのような状態になるでしょうか。
それまでは、「フラスコ内」分の体積だけだったものが、「フラスコ内+注射器内」分の体積に拡大されたことになります。このように体積が拡大されることを「膨張する」と表現します。
大切なことは、空気が膨張するにはエネルギーが必要だということです。注射器が引かれ膨張を強制されることでエネルギーが強制的に消費されることになります。
このエネルギーは、それまで空気が「温度」という形で保有していたエネルギーが使用されます。
したがって、温度分に使用されていたエネルギーが、空気の膨張によって強制的に消費され、気温が低下するという流れが成立するのです。
フラスコ内部に発生した水滴は、この流れを証拠付けるものというわけです。
雲が出来るまでの流れ
以上を踏まえて、雲のでき方の流れを整理してみましょう。
- 地上(あるいは比較的高度が低い地点)には、水蒸気を含んだ空気が存在します。
- この空気は、比較的(上空と比べて)暖かいものですから、上昇します。
- 上昇するにつれて気圧が低くなります。平行して、気温も低下します。
- 上昇を続けると、気圧の低下・気温の低下が継続し、ある地点において露点となります。この時点で、水・氷の粒が発生します。
- さらに上昇を続けるにつれて、発生する水・氷の粒の量がどんどん増えます。
上でご説明した一連の流れが、基本的な雲のでき方です。
雲のでき方のポイント
雲ができるまでの流れで説明した4の地点で雲ができはじめ、5に進むにつれて雲が大きく上空に形成されることになります。
4の地点よりも低空に雲ができることはありません。
したがって、4の地点が雲の底の部分(これを雲底と言います)になるわけです。雲の高さ、と一般的に言うときは、雲底の高さに注目しています。
雲のでき方と試験との関係
試験との関係で大切なことは、まずは『雲のでき方のまとめ』で説明した雲のできる流れをしっかりと説明できることが大切です。
大まかな流れを理解することからはじめましょう。
そして、細部に注目します。雲ができるためには、飽和水蒸気量の理屈と気圧低下と気温低下の理屈について理解しておくことが必要でした。
飽和水蒸気量の問題から湿度を求める問題へと発展する可能性があります。
さらに大切なポイントは、気圧低下についての実験です。上ではフラスコの内部に水滴が発生する、という現象のみに注目しました。
しかし、例えばここに火のついた線香を入れていたらどうなるでしょうか。あるいはゴム風船を繋いでいた場合はどのようになるでしょうか。つまり、少しだけ発展した問い方のバリエーションが存在するのです。
また「気圧」が当然の用語として登場しました。「圧力」というくくりで派生的に出題される場合には、圧力の計算問題と関連して出題されることも非常に多いです。派生し得る可能性に注意しておきましょう。
さいごに
はじめに述べたこととの関係では、「雲のでき方」においては、「飽和水蒸気量・露点・雲底・気圧」という用語について、まずは確実な理解をする必要があるでしょう。
そして、その用語が定着すれば「雲のでき方のまとめ」で説明した流れについて、何も見なくても説明できるように、ストーリーで暗記してしまうことがおすすめです。