音の速さと伝わり方!覚えておきたい音の性質

中学で学習する物理の導入的分野である「光・音」のうち、今回は音について説明していきたいと思います。

理科という科目では、身のまわりの現象を分析することが目的とされています。そのような「身のまわりの現象」の中でも、特に私たちの生活に近接しているのが、今回扱う「音」でしょう。

既に培っている「音」に関する経験則に、今回学習する内容を合わせることで、深い定着を目指しましょう。

音の速さ

音は、どのような場所を音の波が移動するかによって速さが異なります。

具体的に数値を挙げるならば、空気中であれば秒速約340m、水中であれば秒速約1500m、鉄であれば秒速約5120mというように、音の伝わる速さは異なるのです。

つまり、一般的に、音の伝わりやすさは、「個体>液体>気体」の順番と言えることになります。

ただし、真空の中では振動を発生させることができないことから音は伝わらないことに注意が必要です。

音の速さに関する問題

音の範囲でよく出題される問題は、このあと説明する波形図から音の性質を読み取る問題と、音の速さに関する問題です。

音の速さに関しては算数で学習したような知識さえあれば難しくありませんので、速さに関する基本的な公式を復習するための機会とすると良いでしょう。

音の速さの公式

【公式】
音の速さ(m/s)=音の進んだ距離(m)÷音が伝わる時間(s)
音の進んだ距離(m)=音の速さ(m/s)×音が伝わる時間(s)
音が伝わる時間(s)=音の進んだ距離(m)÷音の速さ(m/s)

いわゆる「みはじの公式」(みちのり=速さ×時間)をそのまま利用することによって処理することができます。

音の場合について書き換えると、上の枠内のような形で表現することができます。あわせて、空気中では音の伝わる速さが秒速約340mであることを覚えておくとなお良いでしょう。

例題

例えば、雷が光ってから5秒後に音が聞こえたとしましょう。このとき、340(m/s)×5(s)=1700(m)、という計算によって、自分が居る地点から1700(m)離れた場所で雷が発生したということを求めることができます。

ただし、音の伝わる速さは気温によっても微妙に変化しますし、空気中の水分量によっても変化を受けることになります。

また、光が届くまでの時間も僅かに生じることから、厳密な距離を導いているわけではないということは分かっておきましょう。もっとも、問題で出題される限りでは、省略して良い条件については必ず明記されていますので、問題なく処理することができるでしょう。

音の伝わり方

私たちは日常生活の中でさまざまな音を耳にします。この音は、波として私たちの耳の中に伝わってくるのです。

より詳細に音の伝わり方について説明すると、

  1. ある物が振動します。
  2. 空気中を音波として移動します。
  3. その音波が人の鼓膜を震えさせます。
  4. この鼓膜の振動が、神経によって大脳に伝達され、
  5. 私たちは「聞こえた」

と認識することになります。

音の反射

かたい物に当たると、音は跳ね返ります。これを音の「反射」と言います。

例えば、やまびこはずっと向こうの山に声があたって、その音波が跳ね返ってくることでおこる現象ですし、トンネルの中では音が反響しやすいのもこの「反射」の性質によるものです。

また、お風呂の中で歌うと声がよく響くのは、音の伝わる速さで説明したように、液体の中では音が速く伝わることに加えて、この反射という性質によるものです。

共鳴

物理の世界では、「共振」という現象があります。

ある物体がもつ固有の振動数と同じ振動数の揺れを外部から加えると、その物体が振動をはじめる現象のことを言います。

音の伝わり方にも波があることから、音の世界でも同じようなことがおこります。これを「共鳴」と言います。

つまり、ある発音体は、自分が出す音と同じ高さの音を外部から受け取ると、その発音体自身も振動することになります。これを「共鳴」と言います。

共鳴については、音叉(おんさ)という道具が例として示される場合が多いので確認しておきましょう。

固定振動数について

同じ固定振動数をもつ音叉を用意して、1つを鳴らすと、固定振動数を同じくする音叉も鳴りはじめることになります。これは、鳴らした音叉から発生する音波が、同じ固定振動数をもつ音叉に伝わることによって、それもまた振動するという仕組みによるものです。

興味深いのが、固定振動数が違う音叉に対しては共鳴がおこらないということです。

例えば、上の図において、aとcの音叉の固定振動数が等しくbとdの固定振動数とは異なる場合に、aの音叉を鳴らすとどうなるでしょうか。

共鳴の性質から、cの音叉だけが震え、bdには何も変化が起きません。

音叉が利用される場合には、振動をより良く伝えるために、音響箱が設置されることが多いです。これを共鳴箱付き音叉と言います。教科書などの図を確認しておきましょう。

音の波形

振動回数の違い

音は波の形で伝わることから、それを図に示すことができます。

音の波が生じるということは、空気が圧縮された部分と膨張された部分が交互にやってくることになります。この空気の圧力の変化をグラフにしたものが波形というものです。

波形の形から、音についての性質を読み取ることができます。


(画像:音の高さより)

振動回数とは、発音体が一秒間で振動する回数のことを言います。単位をHz(ヘルツ)で表し、人間が聞き取ることのできる範囲は、おおよそ20Hzから20000Hzまでとされています。20000Hzを超えるものを超音波と言います。

ここでは三種類の音波についての波形が示されています。

基準の波形に比べて、赤色の波形はゆったりとした曲線で描かれており、振動回数が少ないことが読み取れます。これに対して、水色の波形は激しく曲線が上下しており、振動回数が多いことを読み取ることができます。

このように、音波によって振動回数は異なり、その振動回数の多い少ないによって、音の高さに変化が出ます。振動回数が多いほど音は高くなり、振動回数が少ないほど音は低くなる、という性質があります。

振幅の違い

波形の振れ幅の大きさを振幅と言います。この振幅の大小によって、音についての性質が異なります。


(画像:音の大きさより)

基準の波形に比べて、水色の波形は振幅が大きく描かれており、また、黄色の波形は振幅が小さく描かれています。振幅が大きいほど音は大きくなり、振幅が小さいほど音は小さくなるという性質があります。

また、この図において、基準とされる黒色の波形に対して、赤色の波形は基準に対して「真逆」の形状となっています。

このような音波を利用することによって、基準の音が消滅することになります。これを逆位相と言います。

中学理科では出題されることはありませんが、イメージを作りやすいと思われますのでこれを機に覚えておくと良いでしょう。

例えば、今ではノイズキャンセリング機能付きのイヤホンが一般的に展開されているかと思いますが、そこにおいても逆位相の仕組みが利用されていることがあります。

 

さいごに

以上に見てきたように、音の問題が出題される場合、計算問題も複雑ではありませんし、基本的な用語さえ記憶しておれば、その難易度は比較的易しいと言えるでしょう。

ただし、波形図はあまり見慣れているものではないと思いますので、しっかりと読み取る練習をしなければなりません。

日常的に培ってきた経験則に、知識を加えることによって、より深い定着を目指しましょう。

 

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