化学反応式の基礎知識と8つの重要な化学反応式の作り方

非常に「理科っぽい」作業をする代表例が、今回ご説明する「化学反応式」です。

例えば大学を舞台にしたドラマなどでは、教授が複雑な式を板書しているような場面が描かれたりします。その中には、とても高度な化学反応式を詳細に書いている場合があります。

今回学習する「化学反応式」は、このようなカッコいい化学の世界への入り口にあたる部分です。

この入り口から繋がっている道の先には非常に難しい学問の世界が待ち受けていますが、まずは、基本的な化学反応をしっかりと理解し、それを化学式利用して表現することができるようになることが目的となります。

基本を大切に、定着を目指しましょう。

化学反応式の前提として

化学反応式とは、化学変化を化学式で表したものを言います。

ここで大切なのが、「化学変化」と、「化学式」とは何か、ということです。

化学式・化学反応式を知るために、まずは、「原子・元素」から説明します。

原子・元素とは

化学式を理解するためには、まずは「原子・元素」について理解しなければなりません。

原子とは、化学変化によってそれ以上分けることができない、物質をつくっている最小の粒のことを言います。

いわゆる周期表に挙げられているものを指します。

【例】水素原子・ナトリウム原子など

周期表は全て暗記する必要はありませんが、20番目のカルシウム原子までは、名称をしっかりと覚えておきましょう。

また、原子・元素とは、厳密には異なりますが、呼称する場面が異なるという程度の違いがあるということだけを理解しておけば充分でしょう。

そして、これらの原子には、それぞれ記号がついています。水素原子(H)、ナトリウム原子(Na)、カルシウム原子(Ca)というような具合です。このそれぞれを元素記号と言います。

分子とは

いくつかの原子が結び付いてできたもののことを分子と言います。物質の性質を失わない最小の粒を言います。

つまり、これ以上わけることができない単位は原子ですが、実際に世の中で存在しているときには、原子の形で存在しているとは限らないということになります。

分子は、「単体」と「化合物」に分類することができます。

単体

1種類の原子からできている物質のことを単体と言います。
【例】水素分子(H₂)・炭素(C)・銅(Cu)など

化合物

2種類以上の原子からできている物質のことを化合物と言います。
【例】水(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、酸化銅(CuO)など

化学式とは

ここまでで説明したように、物質にはいくつかの存在形式がありますが、ここでは原子の記号を使って、物質が書き表されていました。

この表記を「化学式」と言います。

簡単に言えば、いかなる場合であったとしても、元素記号から表現されている場合には化学式であると考えてよいです。

都度、新しいものが登場するたびに暗記すれば良いですが、まずは代表的な化学式を以下にまとめておきます。以下のもの程度については、試験で直接的に問われることもありますので、覚えておきましょう。

マグネシウム 水素 酸素 塩素 窒素
Cu Mg Fe H₂ O₂ Cl₂ N₂
二酸化炭素 アンモニア 硫化鉄 酸化銅 酸化マグネシウム 酸化銀
H₂O CO₂ NH₃ FeS CuO MgO Ag₂O

そして、もう一度まとめますが、この化学式によって、化学変化を表現したものが、化学反応式という体系的位置付けとなります。

化学反応式について学習する前に、まずは原子・分子などの基本事項から頭の中で組み立てるようにしましょう。

また、化学反応式を作り上げるためには、どうしてもこの基本事項・その具体例について、しっかりと暗記をしておく必要があります。

知識量がものを言う範囲になりますので、しっかりと頭に残すように心がけましょう。

覚えておきたい8つの重要な化学反応式

それでは、本題の化学反応式について、具体例をあげて説明していきます。

それぞれについて、まずはしっかりと日本語で化学変化の説明ができること、そして、それに暗記している化学式をしっかりとあてることができること、が非常に大切になってきます。

1.鉄と硫黄を加熱すると硫化鉄ができる

硫黄(黄色の粉末)と、鉄(黒色の粉末)を混ぜて加熱したときには、硫化鉄ができあがります。この化学変化について、まずは日本語で表現することからはじめます。

・鉄+硫黄→硫化鉄

そして、日本語の式ができた場合には、それぞれを化学式に変換します。

Fe+S→FeS

これでこの化学反応式は完成です。

「日本語で表現する⇒化学式をあてる」という基本の枠組みだけで完成させることができます。おそらく中学生の中で一番簡単な反応式です。

2.炭素を燃焼すると二酸化炭素ができる

炭素を燃やしたときに、二酸化炭素ができます。これを化学反応式で表現してみましょう。

その前に大切なことは、「燃焼」について理解できているか、つまり、空気中の酸素と化合する、ということを忘れないようにすることです。まずは日本語で表現してみましょう。

・炭素+酸素→二酸化炭素

そして、これを化学式に変換してみましょう。

C+O₂→CO₂

これでこの化学反応式は完成です。それぞれの化学式について暗記をしておく必要があります。

化学式を諳記しなければ、化学反応式は作れない!

例えば、炭素が単体であることを覚えていなければ(つまり、炭素→Cであること)、後に説明するように右辺と左辺をあわせることを考えなければならないでしょうし、それでは解答に行き着くことができません。

また、二酸化炭素がCO₂であることをわかっていなければ、ゴールを設定することができません。

つまり、化学反応式では、「左辺の計算式から右辺を導く」という形はとっているのですが、あくまでも両辺についての知識はわかっている前提で、式全体を作成することが問われているのです。

単純な計算問題ではないということです。

3.水を電気分解すると水素と酸素ができる

電気分解とは、電流を流すことによって物質を分解することを言います。水を電気分解すると、陰極に水素、陽極に酸素が発生することはしっかりと復習をしておいてください。

それでは、この化学反応式について検討してみましょう。今までの問題とは異なり、少し複雑な作業が必要となります。

まずは日本語で説明してみましょう。

水→水素+酸素

そして、まずは素直に化学式をあててみます。

H₂O→H₂+O₂

さて、素直に化学式をあてはめたこの式の左辺と右辺を注意してみて下さい。

右辺と左辺のH原子の数はそれぞれ2個で一致していますが、Oの数について、右辺では1個、左辺では2個という違いがあります。

原子が一致しない場合の対応

このように、左辺と右辺とで原子の数が合わないままでは、化学反応式は完成しません。

両辺の原子の数があっていることを確認しなければなりません。合致していることの確認がとれたことによって、化学反応式は完成ということになります。

それでは、この化学反応式を完成させましょう。

ポイントは、両辺で数があっていない原子に注目して一つずつ辻褄を合わせるということです。

まずO原子の数を合わせてみよう!

先ほどの化学式はO原子の数が合っていませんでした。

左辺のO原子の数が1個、右辺のO原子の数が2個ですから、これらを合わせるためには、左辺を2倍することが考えられるでしょう。

2H₂O→H₂+O₂

これによって、両辺のO原子の数はそれぞれ2個で一致することになります。

しかし、これで終わりではありません。O原子について数を合わせた後は、残りのH原子の両辺の数が一致しているかをもう一度確認しなければなりません。

H原子の数も一致させる!

そして、H原子の数について、左辺では4個、右辺では2個と、違いが生じています。そこで、これらを合わせるために、右辺を2倍することになります。とすると、

2H₂O→2H₂+O₂

これによって、H原子について、両辺でその数は4個、O原子について、両辺でその数は2個で一致していることになります。

したがって、これで完成です。両辺の原子の数がそろっているかを常に確認する癖をつけなければなりません。また、両辺の原子の数を合わせる時には、一つずつ順番に修正するようにしましょう。

4.塩化水素を電気分解すると水素と塩素ができる

電気分解について、もう一つ例を挙げてみましょう。

塩化水素を電気分解すると、陽極から塩素、陰極から水素が発生します。これを化学反応式で表現してみましょう。ここからは、比較的簡易な式変形をしていきます。

分からない部分がある方も、簡単にあきらめずにしっかりと読解するよう心がけましょう。

・塩化水素→水素+塩素

HCl→H₂+Cl₂
2 HCl→H₂+Cl₂

今回の場合、両辺の原子に注目する場合、H原子もCl原子もいずれの数もあっていないことから、どちらに注目しても問題ありません。

H原子に注目して両辺の数を合わせると、結果としてCl原子の数もありますし、その逆も然りです。自分で解いて確認をしましょう。

5.銅を加熱すると酸化銅ができる

物質が酸素と結びつく反応のことを酸化と言います。

燃焼によって、当該物質は空気中の酸素と結びつくことになります。酸化についての知識が曖昧な方は、これを機にしっかりと復習をしておきましょう。

燃焼の場合に空気中の酸素と結びつくことを分かっていなければ化学反応式を導くことができないからです。

さて、銅を加熱すると酸化銅ができあがります。これを化学反応式で表現し、都度、両辺について整えて完成させてみましょう。

・銅+酸素→酸化銅

Cu+O₂→CuO
Cu+O₂→2CuO
2Cu+O₂→2CuO

それぞれの段階でどのような作業が行われているかをしっかりと確認しましょう。

両辺について注目したとき、まずは両辺でO原子の数があっていないことがわかります。

そして、それを合わせるために右辺を2倍すると、今度はCu原子の両辺の数が合わないことになります。そして、右辺のCuを2倍することで、最終的な辻褄を合わせることができるというわけです。

6.マグネシウムを加熱すると酸化マグネシウムができる

同じく燃焼の例として、マグネシウムを加熱する場合について考えてみましょう。

マグネシウム+酸素→酸化マグネシウム

Mg+O₂→MgO
2Mg+O₂→2MgO

計算はもう大丈夫ですね。

7.炭酸水素ナトリウムを分解する

炭酸水素ナトリウムと言うと難しく感じるかもしれませんが、ベーキングパウダーの成分であると言えば、少し身近に感じることができるでしょう。

豆知識ですが、炭酸水素ナトリウムを加熱して分解すると気体である二酸化炭素が発生します。この原理によって、パンが膨らむことになるのです。

さて、分解とは、1種類の物質が2種類以上の物質にわかれる変化のことを言います。

炭酸水素ナトリウム→炭酸ナトリウム+水+二酸化炭素
NaHCO₃→Na₂CO₃+H₂O+CO₂

少し複雑ですから、丁寧に解説をしていきます。

両辺のNa原子の数について

まずは、両辺のNa原子の数について注目してみましょう。Na原子の数は、右辺が1個、左辺が2個ですから、まずは右辺を2倍します。

2 NaHCO₃→Na₂CO₃+H₂O+CO₂

これでNa原子の数は合いました。

H原子の数について

次に、H原子の数について注目してみると、両辺それぞれ2個ですから一致しています。

C原子について

C原子についてはどうでしょうか。両辺それぞれ2個ですからこれも一致しています。右辺のC原子の数を間違えないようにしましょう。二か所に展開されていますが、あわせると2個です。

O原子について

O原子についてはどうでしょうか。両辺それぞれ6個で一致していることを見落とさないようにしましょう。特に、右辺では0原子は三か所で展開されているので注意が必要です。

したがって、両辺の原子の数が全て一致しているので、上述の段階で化学反応式は完成しているということになります。

化学反応式を解く上でのポイント

化学反応式を解く上で大切なことは、一つずつの原子数の比較を行うことができるか、ということです。結局変換する必要がないのだから意味がない、と考えてはいけません。

変化する必要がないということを確認することも大切な段階の一つです。また、今回は炭酸水素ナトリウムなどの化学式について、複雑な化学式が登場しました。

優しい先生であれば、問題分においてこれを指示してくれる場合もあるでしょうが、基本的に暗記しておかなければなりません。

8.酸化銅と炭素を分解する

炭酸水素ナトリウムと同じく加熱分解するパターンですが、両辺に複数個の物質が登場しますので、念のために例示しておきます。

酸化銅+炭素→銅+二酸化炭素
CuO+C→Cu+CO₂

まずは、両辺で数が合ってないものを見つけましょう。O原子の数が、左辺で1個、右辺で2個と一致していません。そこで、左辺のCuOを2倍します。

2CuO+C→Cu+CO₂

これによって、両辺におけるCu原子の数が合わなくなりました。そこで、右辺で帳尻を合わせます。

2CuO+C→2Cu+CO₂

これで全ての原子の数が合いました。今回のように、一つの原子について帳尻を合わせたために他の原子についてずれが生じるということは上でもありました。

しかし、化学式の数が増えるとどうしても難しく感じてしまうかもしれません。一つずつ丁寧に処理するように心がけましょう。

+α:エタンを燃焼させる

エタン(C₂H₆)を燃焼させると二酸化炭素と水が発生します。

エタンの化学式は中学生で暗記しておく必要はありませんが、化学反応式を作成する練習のために、経験しておきましょう。

エタン+酸素→二酸化炭素+水
C₂H₆+O₂→CO₂+H₂O

まずは、両辺のC原子の数に注目してみましょう。左辺が2個、右辺が1個ですから、右辺のCO₂を2倍してみましょう。

C₂H₆+O₂→2CO₂+H₂O

次に、H原子の数に注目してみましょう。左辺が6個、右辺が2個ですから、右辺のH₂Oを3倍してみましょう。

C₂H₆+O₂→2CO₂+3H₂O

そして、最後にO原子の数について注目してみましょう。左辺が2個、右辺が7個ですから、左辺のO₂を7/2倍すればよいですね。

C₂H₆+(7/2)O₂→2CO₂+3H₂O

化学反応式には、係数が簡単な整数比でなければならない、というルールがありますので、全てを2倍して整えます。

2C₂H₆+7O₂→4CO₂+6H₂O

この化学反応式を作ることができれば完璧です。このように分数が発生する場合もありますが、段階を踏めば問題ないでしょう。

化学反応式のまとめ

今回は、いくつかの重要な化学反応式について、その作成方法について注目して説明しました。

中学生で学習する化学変化については、酸化・還元・化合・分解・中和と、いくつもの内容がありますし、それぞれに対応する形で、重要な化学反応式が登場します。

各反応の仕組みについてしっかり復習するとともに、登場した物質の化学式、化学反応式を作成する練習を重ねて下さい。

上で述べたような化学反応式の作成方法は、理解する段階で留めてはいずれ忘れてしまいます。自分で作ることができるようにすることが目標です。

いくつも暗記をしなければならないことから大変かもしれませんが、頑張りましょう。

 

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