「どうぞいただいてください」
敬語って難しいですよね。間違った敬語で恥ずかしい思いをした人も多いのではないでしょうか。
冒頭に挙げたセリフは、代表的な敬語の間違いです。食べるのは相手なので本当なら尊敬語を使わなくてはなりません。
正しくは「どうぞ召し上がってください」です。
大人でも敬語は間違えてしまうもの。敬語は非常に難しい問題です。
謙譲語、尊敬語、丁寧語の違いとは?
敬語は大きく分けて三種類。自分を下げる「謙譲語」、相手を上げる「尊敬語」、聞き手や読み手へ敬意を表す「丁寧語」です。
敬語の難しさはこの三種の使い分けがうまくできないところにあります。
丁寧語
辞書には「食べる」とありますが、読み手や聞き手がいるなら「食べます」に変えます。
このような「です・ます」の形が丁寧語です。謙譲語や尊敬語と違って耳にする機会は多いため、自然と使えているでしょう。
謙譲語
謙譲語は「自分を下げる」言葉です。自分が下がれば必然的に相手は上になり、上下関係ができあがります。
謙譲語の分かりやすい例は食事前のあいさつ「いただきます」。自分がものを食べる(飲む)のですが、敬意の対象は神であり食べ物であり作ってくれた人です。自分の動作「食べる」を「いただきます」にすることで、自分を下げて敬意を表しています。
尊敬語
謙譲語が自分を下げるのに対し、尊敬語は「相手を上げる」言葉です。尊敬という文字からイメージする通りですね。
「(私が)いただきます」に対する「(相手が)召し上がれ」が尊敬語です。相手が「食べる」を「召し上がる」にすることで、相手の行動に敬意を表しています。
敬語の形を覚える
尊敬語や謙譲語が難しいと言われる理由の一つは、言葉の形が変わることです。中でも特殊な形の敬語は覚えるしかないため、最初の関門と言えます。
数多くある敬語をすべて覚えるのは大変です。まずは基本である以下の8つを覚えましょう。
- 食べる → いただく(謙)・召し上がる(尊)
- 行く → 参る(謙)・いらっしゃる(尊)
- いる → おる(謙)・いらっしゃる(尊)
- 言う → 申す(謙)・おっしゃる(尊)
- 見る → 拝見する(謙)・ご覧になる(尊)
- する → いたす(謙)・なさる(尊)
- 知る → 存じる(謙)・ご存知だ(尊)
その他の敬語パターン
謙譲語は特殊な形とは別に「お~する」の形で表現することもできます。様々な言葉でつかえるので便利です。
例)私がお話しする
尊敬語は特殊な形の他に、2つの形があります。「~れる・られる」と「お~になる」です。
例)先生が話される / お話しになる
非常に便利な言い回しですが、受験では特殊な形を問われるため覚えなければいけません。
「れる・られる」は受身や可能の意味と混同されることもあります。「先生、食べられますか」は可能か尊敬なのか分かりづらいですよね。
また「お~する」「お~になる」は文字数の少ない言葉では使いません。例えば「見る」「いる」などです。「お見する」「おいになる」と聞いてもピンときません。
そういったこともあり、「特殊な形があるならそれを優先して使う」ことが多いです。
謙譲語と尊敬語のポイントは「主語」
「です・ます」に変えるだけの丁寧語に比べ、謙譲語と尊敬語は使い分けが難しいと感じる人が多いようです。謙譲語と尊敬語を覚えても、どちらを使うのかが判別できないということです。
使い分けのポイントは誰がその動作をしているか、つまり主語をしっかりと考えることです。
冒頭の「いただく・召し上がる」問題も、誰が食べるのかを考えれば間違えることはなくなります。
【私が】食べる → いただく
【相手が】食べる → 召し上がる
尊敬語と謙譲語の使い分け練習
私が塾で教える時には、まず短い文を敬語に直す練習をします。
・私は佐藤と言います。 → 私は佐藤と申します。
・先生が来ます。 → 先生がいらっしゃいます。
主語に注意して尊敬語にするか謙譲語にするかを考えさせるのですが、なかなか時間がかかります。ですがこの基本ができれば、様々な文で応用がで決まるようになります。
美化語
美化語とは丁寧語に含まれるもので、「お菓子」や「ご結婚」と言った言葉を指します。ものやことを丁寧に表していますね。
「菓子を召し上がれ」と言われたら、多くの人が違和感を覚えるでしょう。上品な言葉づかいで謙譲語や尊敬語とのバランスをとるのが、美化語の役目です。
他に、「腹→おなか」「飯→ごはん」などがあります。乱暴でない丁寧な言葉はだいたい美化語と考えてOKです。
まとめ
丁寧語は「です・ます」と形が簡単で、謙譲語と尊敬語のような使い分けはありません。そのため、敬語の難しさは謙譲語と尊敬語の使い分けに集中します。
まずは特殊な形の敬語を覚え、主語で使い分けるという基本をしっかりと身につけましょう。この基本ができていれば、大人になっても敬語に困ることはありません。
なんとなく丁寧な表現を使うのではなく、場面にあった敬語が使える大人になりたいものですね。