滑車の問題例
定滑車・動滑車の性質、使用目的を理解することができたならば、実際の問題を解くことで、より習得を目指しましょう。
もっとも、はじめに述べた通り、仕事の大きさが関係してくる場合もありますので、この点についての復習は必須です。
参考リンク:仕事の計算と仕事率の求め方!物理における仕事の定義と覚えておくべき公式
定滑車の基本問題
【問題1】
図1で、おもり(Load)を100gとした場合、おもりをもちあげるためには、何Nの力を加える必要があるか。ただし、100gの物体にはたらく重力の大きさを1Nとする。
まずは、問われている滑車について分析をしなければなりません。今回、図1で使用されている滑車は天井に固定されていますので「定滑車」ということが分かります。
したがって、定滑車の性質をしっかりと確認しましょう。
単位を変換しよう
さらに、問題ではおもりの重さが100gという単位で与えられていますが、引き上げる力を答えるためにはNに換算しなければなりません。
したがって、このおもりにはたらく重力の大きさは1Nであることが導かれます。
これで下準備が整い、本題です。
今回は定滑車が出題されており、単純に引く力の大きさについて考えればよいことになります。定滑車は加える力の向きをかえるために使用されるのであって、加える力の大きさに変化を与えるものではありませんでした。
解答
したがって、100gのおもりをもちあげるためには、1Nの力を加えることにある、ということになります。
かなり丁寧に説明しましたが、慣れると見た瞬間に答えがわかると思います。条件反射的な処理ができるようになるまでは、丁寧に一つずつ段階を踏むことを厭わず、定着を目指しましょう。
定滑車の基本問題
【問題2】
図2で、おもり(Load)を100gとした場合、おもりをもちあげるためには、何Nの力を加える必要があるか。ただし、100gの物体にはたらく重力の大きさを1Nとする。
同じく、使用されている滑車についての分析からはじめましょう。図2では、使用されている滑車はどこにも固定されていないことから「動滑車」であることがわかります。
そして、先程と同じように、おもりに加わる力について、単位を換算して、1Nの重力が加わっていることも確認しましょう。
そして、動滑車が使用される目的は、加える力の大きさを半分にする、ことであったことを思い出すことができれば、100gのおもりをもちあげるためには、0.5Nの力を加えることになる、ことが導かれます。
ひもの低距離を求める問題
【問題3】
図1、図2で、それぞれおもり(Load)を20cm持ち上げるためには、何cmひもをひかなければなりませんか。
滑車の問題は、基本的に、【問題1】【問題2】のように、加える力の大きさについて問う問題と、本問のように、引っ張らなければならないひもの長さを問う問題に分類することができます。
図1の引くひもの長さ
さて、図1で使用されている滑車は定滑車でした。定滑車については、力の方向をかえることだけが目的で、その他の事項については純粋な手作業の場合と何らかわるところがありませんでした。
したがって、おもりを20cm持ち上げるためには、同じく20cmひもを引かなければならないことになります。
図2の引くひもの長さ
図2で使用されている滑車は動滑車でした。動滑車については、加える力の大きさを半減させる効果が認められるかわりに、ひもをひく距離は2倍になってしまうというデメリットがありました。
したがって、おもりを20cm持ち上げるためには、2倍の40cmひもを引かなければならないことになります。
組み合わせ滑車
このように、定滑車と動滑車を組み合わせたものを「組み合わせ滑車」と言います。定滑車にも動滑車にも、それぞれメリット・デメリットがありました。
そして、これらを組み合わせて使用することによって、さまざまなメリットを享受しようという目的で、色んなパターンで組み合わされることになります。
組み合わせ滑車について
今回の図であれば、定滑車が1つ、動滑車が1つを組み合わせています。
これによって、定滑車では力の向きをかえることができる、動滑車では力の大きさを半減させることができる、という二つのメリットを両取りしようとしているのです。
例えば、図における物体(Load)の重さが200gであったとき物体を持ち上げるのに、何gの力を加える必要があるでしょうか?
この種の問題を解く上で、学校等では矢印を書き込むことによって処理する方法が説明されるかと思いますが、今回はあえて、滑車が使用される目的から見直すことで、簡単に解答を得る方法をご説明します。
滑車の性質から問題を解く
まずは、物体をつるしている動滑車について注目して下さい。動滑車の目的は、加える力を半分にして持ち上げることにありました。したがって、この物体の両側のひもには、それぞれ100gの上向きの力が加わることになります。
そして、残る定滑車についてですが、定滑車とはそもそも力の向きをかえる役割を担うもので、力の大きさに変更を加えるものではありませんでした。
したがって、物体を持ち上げるために必要な力は100gであることが導かれるのです。では最後に組み合わせ滑車の問題を解いてみましょう
組み合わせ滑車の応用問題
【例題4】
(左から順番に滑車1、2、3,4とする)
上の図でおもり(Load)を8tとした場合、おもりを持ち上げるためにはひもをいくつの力で引く必要がありますか?
組み合わせ滑車のパターンは無限にあるので、処理に慣れるしかないのですが、今回もそれぞれの滑車の意義について注目することで解答を導いてみましょう。
動滑車1、動滑車3、定滑車2、定滑車4の四つが組み合わされているパターンです。
動滑車1と3に加わる力を考える
まず、8tのおもりと直につながっている部分が、動滑車1と動滑車3の二つの動滑車であることから、それぞれ均等に4tずつの負荷がかかることが分かります。
そして、動滑車の意義が、加える力を半分にすることにありましたので、各滑車にあるそれぞれのひもには、上向きに2tずつの大きさが加わっていることが導かれます。
定滑車4の性質を考える
そして、定滑車4に注目したときに、定滑車はあくまでも力の方向をかえるためだけに設置されるもので、力の大きさに変更を加えるものではありませんでしたので、2tの大きさがそのままひもに伝わることになります。
答え
したがって、本問において、8tのおもりを引くためには、2tの力を加えることになります。
矢印をいくつも書き込むことで視覚的にわかり易くするというアプローチはもちろん大切なことです。
もっとも、そのようなやり方であったとしても、滑車の存在意義を忘れては複雑なパターンに対応することができません。
原理原則に立ち返ることができれば、図を簡単に読解するだけで、以上で述べたように解答を導くことができるのです。
さいごに
滑車の問題は、どこまでも複雑に作成することができますので、逐一全パターンについての解法を暗記するという勉強法を採用することはできません。
この意味で、暗記科目としてのメリットがなくなってしまうので、苦手とする生徒が多くなってしまいます。
しかし、今回の説明を読んでいただければ、根本の原理・意義に立ち返る作業をすることによって、ある程度の問題であれば、比較的簡単に処理できるということが分かってもらえたのではないでしょうか。
滑車に限らず、どのような分野についても言える学習法です。しっかりとした理解さえあれば、おおよその問題で躓くことはないでしょう。深い理解を目指しましょう。
さらに、今回は詳細について検討しませんでしたが、仕事の原理から派生する分野であることから、仕事の公式・単位などについての復習を欠かすことはできません。
今回いくつか挙げた例題について、例えばそれぞれについてひもを引き上げる長さについての設問を加えることによって、さらに仕事の大きさを問う問題にまで展開することは極めて容易です。
中学三年生での学習ですから、今まで習ってきたことを網羅的に処理することに慣れはじめなければなりません。体系的な学習を常に意図すれば、効果的な能力アップが見込めるでしょう。