仕事率
仕事率とは
「仕事」を求めることができるようになれば、ようやく「仕事率」について考えることができます。仕事率とは、単位時間あたりにする仕事の大きさのことを言います。
一般的にはここで言う「単位時間」とは1秒を指すとされています。仕事率を求める公式は以下の通りです。
単位
仕事率の単位はW(ワット)が使用されるのが一般的ですが、公式をより忠実に表現する意味でJ/s(ジュール毎秒)という表記がされることもしばしばですので、混乱しないようにしましょう。
また、秒のことをsという単位で表す点にも注意しましょう。
ここで大切なことは、仕事「率」という名の通り、どれだけの効率で仕事をすることができたのか、仕事のペースはどの程度のものなのか、ということを測るための指針が「仕事率」であると理解することです。
公式を暗記するだけではいずれ忘れてしまいますので、何故仕事率などというものを考えなければならないのか、という点について、しっかりと理由付けをして頭の中に刻み込みましょう。
仕事率を求める問題1
①モーターAを使用すると8秒かかった。
②モーターBを使用すると10秒かかった。
モーターAとBで、どちらの仕事率の方が大きいか、また、そのときの仕事率を求めなさい。なお、100gの物体にはたらく重力の大きさを1Nとする。
解法とポイント
まず、仕事に関する問題ですので、物質の質量に関して、単位が㎏のままではいけません。
このような形で問題においてNへの換算が誘導されますので、丁寧に変換して準備を整えてから本題に進むようにしましょう。本問では、物体の質量は5㎏ですので、100g=1Nという条件を利用すると、50Nの力がかかっているということがわかります。
そして、①②のいずれの場合であったとしても、物体に働く力は同じですし、移動させる距離も等しいです。つまり、①と②では時間は確かに異なりますが、「仕事」の大きさは変わらないことが分かります。そこで、仕事の大きさを先に求めておきましょう。仕事の公式を利用すると、
50(N)×4(m)=200(J)
という形で求めることができます。
各モーターの仕事率
それでは、それぞれのモーターについて、仕事率を求めてみましょう。
モーターA:
200(J)/8(s)=25(W)
モーターB:
200(J)/10(s)=20(W)
という形でそれぞれの仕事率を求めることができます。
答え
本問ではモーターAの方が仕事率が大きく、またその仕事率は25Wである、ということになります。
同じ仕事をする場合には、それを短い時間で完了させることができる方が効率が良いと考えることができますので、この解答は納得しやすいのではないでしょうか。
仕事率に関する問題2
仕事率を利用して問題を解くパターンについても触れておきましょう。
問題を解くための準備
まずは先程と同じように、下準備をすることからはじめましょう。
本問では仕事が問われることになりますので、質量15㎏を換算して、150Nの力が働いていると理解をしましょう。
そして、次に、この150Nの力で5mの距離を移動させることになりますので、仕事の大きさを求めることもできるでしょう。仕事の公式にあてはめると、
150(N)×5(m)=750(J)
という形で仕事の大きさを求めることができます。
仕事率の求め方
ここまで完了すると、やっと本題です。【例題1】で導いたモーターAの仕事率は25Wでした。
この仕事率をもって、750Jの仕事をするには、どれだけの時間がかかりますか、という問題であると丁寧に読み替えることができますか?まずは、素直に仕事率の公式に代入してみましょう。求める時間をxとすると、
25(W)=750(J)÷x(s)
という形で表現できるでしょう。これができれば、残りは計算するだけです。
x(s)=750(J)÷25(W)
=30(s)
したがって、30秒というのが答えとなります。
この問題で感じていただけたと思いますが、仕事・仕事率の問題においては、「単位」がかなり厄介となります。
JとWという二つの新規の単位が出現すること、さらにはWを求めるにはJが必要であるという関係からも、混乱の種となりやすいです。
そこで、Wだけに頼らずW=J/sであると上でご説明しましたが、慣れるまではJ/sの単位を使用することで、まずはJの単位に慣れ、それがおおよそ完了した際に、Wを利用し始めるという方策をとるのも一つの定着の手段であると思われます。
各自、工夫をしながら定着を目指してください。
その他注意事項
この問題でもモーターが使用されていましたが、仕事においては、道具を利用しても、道具を使わずに手で作業がなされたとしても、仕事の大きさは変わりません。このことを「仕事の原理」と言います。言葉だけの問題ですが、しっかり覚えておきましょう。
また、この仕事の原理との関係で、例えば、滑車を使った仕事などが出題されることになります(章を改めてご説明します)
さいごに
夏休みの宿題として、ドリルを40頁しなければならないとしましょう。これを毎日1頁ずつやって40日で終わらせるのか、夏休み最後の1日に40頁を無理矢理終わらせてしまうのか、果たしてどちらの方が良いのでしょうか。
40÷40=1の仕事率
40÷1=40の仕事率
夏休みの宿題をさも仕事率であるかのように捉えた場合には、40の仕事率の方が効率は良いようにも見えますね。
しかし、実際に二つの夏休みを比較した時に、どちらの方がしっかりと効率よく勉強できていると言えるでしょうか。
今回学習した「仕事率」というものは、あくまでも物理の世界における効率について焦点をあてたものです。
単位に不慣れであるという部分さえクリアすれば、利用する公式も単純ですし、出題される問題もさほど難しいものではありません。だからと言って、テスト前日だけ勉強したとしてもその場限りをやり過ごすだけです。
毎日の積み重ねこそ、学習内容の習得にとって大切なことではないでしょうか。