割合の一つの形式として「比」という分野を学習します。
多くは小学校5年生6年生でこれに触れ、一定数の生徒に関して、残念ながら算数嫌いを発症するきっかけになるものでしょう。
もちろん学校の授業でもわかり易いように具体例を示しながら指導はされていますが、学校という形式上、どうしても与えられる具体例の数、パターンが少なくなってしまう結果、生徒がなかなか経験を重ねることができない点が問題点として指摘されます。
比の勉強をするにあたって
自宅での学習において、というよりも、日々の生活の中で割合という概念にできるだけ触れさせてやること、まずは%などの割合についての基本的な概念についての経験をしっかりと踏まえた上で、比についてもその延長線上で日常に取り込んでいくことで、目覚ましい成長が見受けられることになります。
算数の定着一般に言われることですが、得手・不得手が子どもによって分かれてしまうのは生まれ持っての要因ももちろんありますが、基本的には後天的な要素に左右されることが多いです。そして、その後天的な要素の最も大切なものは、日々の経験量の差、経験の蓄積の度合いであると言えます。
これからさまざまなことを学ぶお子さんがいらっしゃる方にはぜひ伝えたいのですが、子どもが苦手意識を持つ前に、当たり前のものとして日常に取り込んでやる作業は本当に効果的なものがあります。
比とは
比・比率とは、割合に対する考え方の1つです。
シンプルに、2つのものの大きさを比較したいとき、その考え方は2通りあります。
物を大小で捉える
1つ目が、どちらか一方を「1」として、つまりどちらか一方を基準として、もう一つの大きさを捉えるというやり方です。例えば、太郎がお小遣いを100円もらっていて、花子はお小遣いを300円もらっていたとしましょう。この時、
「花子は太郎の3倍のお小遣いをもらっている」
という表現をすることができるでしょう。
これは、太郎のお小遣いを基準にして、花子の大きさを捉える方法、ということができ、「倍数」という分野付けをすることができるでしょう。考え方が大切ですので、それを優先的に捉えて下さい。
参考リンク:公倍数と最小公倍数!倍数の問題で100点をとる勉強のコツとポイント!
基準と比較することが比
2つ目が、2つのものの大きさを比較する上で、「この2つ以外の基準」を持ち出して、つまり、「この2つの大きさ以外のものを1として」、2つのものの大きさを測るという方法です。基準がどこにあるのか、という違いです。
例えば、太郎が200円のお小遣いをもらっていて、花子が300円のお小遣いをもらっていたとしましょう。ここで、それぞれが持っている200円、300円というものを基準に設定せずに、例えば、「100円」という基準を持ち出したとしましょう。
すると、100円の基準に対して、太郎は2倍、花子は3倍のお小遣いをもらっていることになります。この2倍と3倍がそれぞれの保有量となり、これを比較することによって大きさを比べるのです。
「100円に対して、太郎はその2倍、花子はその3倍のお小遣いをもらっている」
という言い方ができるでしょう。そして、これを数式で表現する時の約束ごととして、
太郎:花子=2:3
という書き方がなされているのです。この2番目の考え方が「比」と言われるものです。
比の計算方法
上で説明したお小遣いの事例について、それを正確な算数のルールの中で解答するには、以下のような方法をとることになります。
太郎と花子のお小遣いの比を表すと、
200:300
となる。この式を整理すると、二つの数字の最大公約数は100であるから
2:3
という解答が導かれる。
このような構造で処理することになります。
比の表記ルール
比の世界では、A:Bという表現をもって大きさを伝えるのですが、それらはできるだけ簡単な整数の形で表現しなければならないというルールが設定されています。したがって、200:300のままでは解答とすることができませんので、これを整理する必要があります。
そして、その整理をする際には、それぞれの共通の約数で、できるだけ割り算をしていくのです。結果的に、最大公約数で割った場合に得られた値が答えとなるのですが、最大公約数を都度探すのが面倒な場合には、
200:300
=100:150
=50:75
=10:15
=2:3
というように、順次2、3、5などの分かりやすい約数で割れるかどうかを検討して、そのプロセスを繰り返すことで解答に至ることができます。もっとも、比を学習する段階では最大公約数については既に学習しているでしょうし、これらの定着を確認する意味を込めて、ここでもう一度約数・倍数について復習をしてみてはいかがでしょうか。
参考リンク:最大公約数の問題はこれで完璧!約数を漏れなく求める方法と公約数の見つけ方
比の計算問題
それでは、以下で簡単にいくつかの比の問題について検討しながら、それぞれの注意点について説明していきます。
最小の整数比を求める基本問題
【問題1】
26:39をいちばん簡単な整数比にしなさい。
さて、しっかりと約数を見つけることができるでしょうか。
約数を見つけるためには、素数をしっかりと数えあげることができるかがポイントでしたね。今回は13という素数である約数を見つけることができるかが分かれ目となります。少し意地が悪いように思われるかも知れませんが、約数についての理解がしっかりしている方には簡単なはずです。
26:39
=2:3
少数から最小の整数比を求める問題
【問題2】
1.5:2.5をいちばん簡単な整数比にしなさい。
さて、比の中に小数が含まれています。比の問題では、このようなものを整理することが求められる場合も、往々にして一般的です。
しかし、あくまでも目的は「約数を見つけること」です。そして、その作業を行うためには、すべての数字を整数にしてしまえばよいわけです。極端な話、100000を両者に掛けてやっても、それぞれは整数に変形することができます。そこから順次約数で割っていけばいずれは解答に至ることができます。
もっとも、それではあまりに回りくどいので、今回は両辺を10倍することによって、比の問題の基本視座に至るための土台を作りましょう。
1.5:2.5
=15:25
=3:5
【問題1】では既に土台が出来上がっていましたが、【問題2】では土台を作る作業が増えた分難しく感じるかもしれません。しかし、綺麗な土台を作る必要はないということまでは求められていないということを覚えておきましょう。
少数と分数から整数比を求める問題
【問題3】
1.5:1/3をいちばん簡単な整数比にしなさい。
小数と分数が入り混じっていても問題ありません。一つずつ丁寧に土台を作っていきましょう。
少数を整数に
まずは小数側に注目して、両辺を10倍してみましょう。
1.5:1/3
=15:10×(1/3)
=15:10/3
という形になりますね。これで前者は整数になりました。
分数を整数に
後者の分数を整数にするために、分母と同じ数、つまり3を両者にかけましょう。
15:10/3
=45:10
これで、土台作りが完了しました。あとは約数で割るだけの作業ですね。
45:10
=9:2
いかがでしょうか。決して難しくないでしょう。
さいごに
以上で述べたように、比の計算は、それ自体はかなり単純なもので、小学生で学習してきた割り算掛け算などの基本的な数的処理能力を備えていさえすれば問題なく処理することができるのです。しかし、それだけではただの単純処理によって点数をとっているだけで、いずれ、数学の世界で壁にぶつかることになります。
そこで比の考え方をしっかりと意識させたり、あるいは勉強を日常に組み込む、例えば、普段の会話から「%」や「倍」という概念を使うことを繰り返すことによって、子どもの定着、そして今後の伸びしろは、かなりかわってきます。
色々な工夫をしながら、学習させてやり、苦手意識を作る隙間を与えないことが大切です。