今回は、「動滑車・定滑車」について学習をしていきます。
それぞれの滑車を利用した場合の力の関係について注目するだけであればさほど難しくはないのですが、この道具が登場するのが「仕事の原理」の分野の関係であることが、事態を少し厄介にしてしまいます。
つまり、滑車の性質を理解することに加えて、その性質を利用して、仕事の大きさを求める作業が要求されてしまいます。
そのため仕事の公式などについての定着を前提にした形の出題がなされてしまう結果、学生にとって「嫌気のさす分野」として認識されがちになってしまっているのです。
最終的には、滑車を利用した形式で仕事の大きさを求めなければならないのですが、その前に、
- 滑車の性質を完全に定着させること
- 仕事の計算(公式)を完全に定着させること
を第一の目標としてください。そして、この水準に到達した場合に、滑車を利用した仕事の問題に挑戦すると良いでしょう。
定滑車と動滑車
定滑車とは
滑車には、図1と図2のような2種類の滑車があります。図1にあるように、滑車の軸が天井などに固定されているものを定滑車と言います。
動滑車とは
これに対して、図2にあるように、滑車の軸がどこにも固定されていないものを動滑車と言います。
勉強のポイント
出題される中では、いくつもの滑車が複合的に関連付けられることがあり、その際にはどちらの滑車の理屈を使用しなければならないかを読み取らなければなりません。
そこで、その見極めのポイントが、「軸が固定されているかどうか」という点となります。
それでは、以下でそれぞれの滑車の性質について説明をします。「なぜその滑車を使用するのか」という目的に注目すると、知識が頭に残りやすいと思われます。
定滑車の性質
定滑車を使用する場合の目的は、「力の向きをかえる」ことにあります。
物体を引き上げる場合のことを想像してみてください。
ある物体にひもをつけて持ち上げたい場合、
- ひもを引き上げる、
- ひもを引き下げる、
という二つのやり方があれば、どちらの方が力を加えやすいでしょうか?
②ひもを引き下げる、方が、踏ん張りやすく、大きな力を加えることができるのではないでしょうか。
そこで、加える力の向きをかえるために利用するのが「定滑車」です。
定滑車で力の向きを変えられる
定滑車がなければ、ある物体を持ち上げるためには「上向き」の力を加える必要がありますが、定滑車を利用することで、それ以外の方向(下向き・横向き・斜め向きなど)に力を加えることができるようになるのです。
ひもをひく距離、力の大きさは同じ
ただし、このようなメリットがある反面、定滑車を使用したとしても、加えなければならない力の大きさが減るわけではなく、定滑車を使用しないで手で作業する場合と同じだけの力を加えなければなりません。
このように、加える力の大きさについて効率良くなるわけではないという意味でデメリットがあると言えるでしょう(動滑車について読んだ上で、それとの比較でもう一度読み返して下さい)。
定滑車のまとめ
まとめると、「力の方向を変えることができるが、加える力の大きさ・ひもを引く距離はかわらない」、これが定滑車の性質です。
動滑車の性質
動滑車を使用する場合の目的は、「力の大きさを少なくする」ことにあります。
ある物体を持ち上げたいとき、あまりに重たくて持ち上げることができないときに、動滑車を使用すれば持ち上げやすくなるのです。
半分の力で持ち上がる
具体的に説明すると、動滑車を1つ利用すれば、実際に手だけで作業するときに比べて半分の力の大きさでそのものを持ち上げることができるようになります。楽に持ち上げることができるようになる、ということです。
引くひもの距離は2倍になる
ただし、定滑車と違って固定されておらず、動滑車それ自体が動いてしまうので、手だけで作業するときと同じだけの高さを持ち上げるためには、ひもを引く距離は2倍を要することになります。
動滑車のまとめ
まとめると、「加える力の大きさは半分になるが、ひもを引く距離は2倍になる」、これが動滑車の性質です。