今回ご説明する「仕事率」は、中学三年生で学習物理範囲に含まれるものです。
中学生で学習する理科は、小学生で学習する理科と学問としての色彩を帯びてくる高校理科との間の、ちょうど橋渡し的な役割を担っていて、範囲によって学習難度にはかなり差が生まれることになります。
特に、この仕事率あたりの分野は難しい側に位置するもので、受験が迫ってくる忙しない中で新たに学ばなければならないことから、生徒にとっては敬遠しがちな内容になってしまいます。
とはいえ、受験ではもちろん必須の分野ですから、確実に公式を利用して計算する能力を身に付けなければなりません。また、さまざまなケースで「仕事」が想定されることから、いくつもの場面の処理を覚える必要もあります。
荷が重いかもしれませんが、理屈をしっかりと確認しながら学習を進めましょう。
物理における仕事とは
仕事率について学習する前に、そもそも物理の世界で言う「仕事」とはどのようなものであるのかについて確認をしましょう。
ある物体に力を加えて、力の向きに動かしたとき、その物体に「仕事」をしたと言います。
抽象的な説明から理解することも大切ですが、具体的な事象を考えることでイメージを作りましょう。
仕事のイメージ
例えば、地面に落ちている空き缶を蹴飛ばした時、その空き缶は蹴った方向に飛んでいくでしょう。
このようなとき、空き缶に力を加えてこれを動かしたことになりますので、空き缶に「仕事」をした、と表現することができます。
仕事の公式
「仕事」がどのようなものであるか何となくわかっていただけましたか?では具体的な数値をもって「仕事」の大きさを求めてみましょう。
仕事の大きさを求めるためには、以下の公式を使用することになります。
仕事の単位
仕事の単位はJ(ジュール)というものを使用します。
また、力の大きさを表す単位としてN(ニュートン)が使われることはもう定着していますか?
曖昧な場合には復習をしてから先に進みましょう。
物理の範囲では、一般的に力の大きさについての単位はN(ニュートン)で統一されますが、関連した単位として挙げられる㎏からの変換についても復習をしておきましょう。
※基本的に1㎏=9.8N換算することになりますが、問題文において適宜変換公式について指定されるのが通常です。
仕事の求め方
物体を力の向きに動かす
では、60Nの力で、ある物体を5m動かしたときの仕事を求めてみましょう。
60Nの力で物体を5m動かしたことから、これを上の公式にあてはめると、
60(N)×5(m)=300(J)
という形で求めることができます。公式さえ定着していれば難しくはないでしょう。
物体を引き上げる
関連して、ある物体を引き上げた場合の仕事についても考えてみましょう。例えば、40Nの物体を4mの高さに引き上げる仕事の大きさを求める場合も、上の公式を利用することによって求めることができます。つまり、
40(N)×4(m)=160(J)
ということになります。
物体に対して力を加えて移動させる場合であれば、横に移動させても、縦に移動させても、同じ公式を利用して仕事を求めることができる点を学んで下さい。
物体をゆかの上で引く
ある物体を、ゆかの上で引いて動かした場合、ゆかと物体の間に摩擦力が発生します。この摩擦力は、物体を引く力と同じ大きさで、向きは反対となります。
例えば、質量が500gの物体を水平なゆかの上に置き、一定の速さで引いて50cm動かしたとしましょう。物体を引く力が1.6Nであったとき、物体を動かした仕事の大きさを求めてみましょう。
この場合、引く力が1.6Nで、0.5m移動させたという点に注目することによって、1.6×0.5=0.8(J)という処理をすることももちろん可能です。
ただ、摩擦力に注目した場合に、引く力と同じ大きさの力が逆向きに加わっていることから、1.6Nの摩擦力が物体にかかったと表現することもできます。そこで、
物体をゆかの上で引いて動かす仕事(J)=摩擦力(N)×移動した距離(m)
という表現をすることも可能となる点に一応注意をしておきましょう。