円錐に限らず、図形問題は空間的な能力を問われる範囲であることから、これを苦手とする生徒は多いのではないでしょうか?
問題では表面積が問われているのに立体図しか書かれていなかったり、そもそも文章しか書かれていないために立体図・展開図を書かなければならなかったりと、自分の力で対象図形の全貌を視覚的に捉える作業を要することが要因であるように思われます。
もっとも、図形の範囲に関しては公式を暗記すればある程度の解答が可能であるともいえるので、その意味では比較的容易な分野であるとも言えます。
ただし、いつも直接的に公式に全てを代入できるような材料がそろっている問題ばかりが出題されるわけではありません。
このような場合に備えるためにも、学習にあたっては、常に図形を視覚的に捉える作業を怠らないようにしましょう。公式を利用する際にも、実際の図形を都度目にしながら、どこが底面積で、どこが高さなのか、ということを適宜確認する作業を繰り返すことで、自然と頭の中に図形が定着し、公式の当てはめの力もつくでしょう。
円錐の体積の求め方
円錐の形は?
円錐とは、以下のようなとんがり帽子の形の図形を言います。一般的に、「錐」という表現がされる場合には、頂点がとがった形のものを指します。
円錐の体積公式について
一般的に、錐の体積公式は以下のように表されます。
底面積×高さ×1/3
そして、これを円錐についてより具体化すると、
半径×半径×3.14×高さ×1/3
(πr²×h×1/3)
となります。
円錐の場合、底面は円の形となるので、底面積部分に円の面積公式を代入することによって、円錐の公式を完成させることができます。
ここで、「錐の体積」の公式を一度理解しておけば、三角錐、四角錘などの公式を考える際に関連付けて理解することが可能となります。
三角錐の場合には底面積部分に三角形の面積公式を代入すればよく、四角錘の場合には底面積部分に四角形の面積公式(四角形の形状によって公式内容は変わります)を代入すればよいのです。
例題
OA=2、OP=3のとき、この円錐の体積を求めなさい。
円錐の公式に代入することによって、答えを求めることができます。つまり、
=半径×半径×3.14×高さ×1/3
=2×2×3.14×3×(1/3)
=12.56
となります。円錐の公式がしっかりと定着していれば容易に求めることができるでしょう。
円錐の表面積の求め方
問題を学ぶにあたって
体積を求める場合と同じく、円錐の表面積を求める場合にも公式が存在します。ということは、この公式させ覚えてしまえば、円錐の表面積が問われる問題は簡単に処理できるように思われるかもしれません。
しかし、何度も述べますように、図形問題は「公式に直接代入すればそれで答え」というような安直な問題構成をされることは少ないですし、そのような場合には、自分で公式に代入するための材料をそろえる必要があります。
したがって、円錐の表面積を求めるにあたっては、公式を暗記する前に、「なぜこの公式によって円錐の表面積を求めることができるのか」ということを理解することからはじめましょう。
これによって、円錐の表面積に関して多面的な問われ方をした場合でも対処する能力をつけることができます。
円錐の表面積の問題
OA=2、OP=3のとき、この円錐の表面積を求めなさい。
表面積を求める際に、一番はじめに必要なことは展開図を考えることです。円錐の展開図は以下のような形になります。
【円錐の展開図】
上図のように、展開図が「円+扇形」となっていることを確認しましょう。つまり、
円錐の表面積=円の面積+扇形の面積
となります。したがって、これを求めるには、円の面積公式と扇型の面積公式を利用すれば良いのです。
円錐の底面積
本問における底面積は、半径が2の円の面積を求めること、ということになります。
2×2×π
=4π
が底面積となります。ここは問題ないでしょう。
扇形の面積
最大のポイントが扇形の面積です。扇形の面積公式は、以下のように与えられます。
扇形の面積=半径×半径×3.14×(x°/360)
=πr²×(x°/360)
つまり、扇形の面積を求めるには、中心角Xの値を求める必要があるのですが、本問のような立体図だけが与えられた時に、扇形部分の中心角をどのように求めるかがポイントとなります。
扇形の中心角を求めるために、「底面の円周の長さ=扇形の弧の長さ」という性質を利用します。円錐という図形の性質上、底面の外周の長さと、扇形の弧の長さは当然に等しいことから中心角を求めます。
扇型の弧の長さ
底面の円周の長さ=2×2×π
=4π―――①
扇形の弧の長さ=2×3×π×(x°/360)
=6π×(x°/360)―――②
したがって、①=②より
4π=6π×(x°/360)
(x°/360)=2/3
x=240°
このように、扇形の中心角が240°と求められます。これを利用して、扇形の面積を求めると、
扇形の面積=3×3×π×(x°/360)
=6π
が扇形の面積となります。
以上より、底面積+扇形の面積=10πを求めることができるわけです。
円錐の表面積の公式
円錐の表面積を求めるには、「扇形の面積公式」「扇形の弧の長さの公式」を駆使する必要があります。もちろん、この過程を経ることが正しい解法ですし、理解できなければなりません。
しかし、実際の試験問題で出題された際に、このように複雑な過程をおってしまうと、時間的に勿体ないですし、ミスも生まれかねません。そこで、以下に円錐の表面積の公式をご紹介します。
円錐の表面積=OA×π×(OA+PA)
万が一公式を忘れてしまった場合には、以上の過程をたどるより他ありません。したがって、上で説明したことは必ず習得しましょう。
念のために、問題2について代入すると、2×π×(2+3)=10πとなりますね。
さいごに
公式を暗記することはとても大切なことですし、その公式を利用できれば実際に点数がとれるわけですから、それで十分にも思います。
しかし、やはり暗記だけに頼っていると、万が一記憶からこぼれてしまった場合などに対処することができなくなってしまいます。
したがって、単純な暗記だけで数学に立ち向かうのではなく、公式が導かれる理由・公式を使った場合のメリット等をしっかりと理解した上で、練習を重ね習得を目指しましょう。
また、最初にも述べた通り、図形問題は視覚的なイメージを作り上げることができるかが非常に重要なポイントの一つです。したがって、慣れるまでは大変かもしれませんが、実際に図を自分で書いてみるなどの手間を惜しまずに、学習に励んでください。